建築士が官僚のごとく働かねばならぬとしたら
#元ネタはDan Kogaiさんの邦訳によります。
建築士、
家を一つ設計施行しろ。まだ何が必要か具体的なことはわからないので、必要になるかもしれないことはきちんと網羅的に説明するように。
寝室の数は、2から45までの間。寝室の追加と削除は簡単に出来るようにしておくこと。青写真が出来たら、着工するまでにはどれにするかを最終判断する。それぞれの青写真について明細書を付けるように。どれを選んでも問題がないように。あ、詰まっていない粗々のものでいいから、2、10、20、30、40、45の場合にどんな感じになるか、明日の朝一で。
完成後の家の費用は、今住んでいる家よりも安上がりでないと駄目。もちろん同時に、今の家の欠陥(上に乗るとキッチンの床がきしむとか、壁の断熱がなってないとか)を全て修正しておくように。建築費用だけを考えるなんてことは論外で、保守費用も最低に。当然ながら、それにはアルミやビニールやサイディングのような高品質の部材が必要なのはわかってるよね(アルミが使えない場合は、その理由を委細もらさず説明すること)。施行においては最新のデザインと素材でないなんてことは許さない。モデルルームにひけをとらないように。ただし、キッチンには1952年ギブソン製の冷蔵庫を含め、今あるものが全て無理なく収まるようにすること。正しく家を設計するにあたって、当然だが周りの住人からいちゃもんをつけられるなんてことがないように。そうそう、家に関してはうるさい親戚への根回しもよろしく。盆正月にあれこれ好き勝手なことをいわれるようでは君は無能だ。
選択肢は入念に吟味すること。ただし、決める前には、必ずこちらの意向を確認しに来い。くだらない問題はそっちの責任で片付けておけ。建築士の仕事は、全体計画・大枠の案を網羅的に示し、その中からこちらが選んだものの細部を完璧に詰めることだ。カーペットの色なんかはいちいち聞きに来るな、でも後で思っていたものと違うことが判明したら、いつでも無償でこちらの要求どおりに変えろ。ところで子供は青が好き。
資材調達の実費はそちらの負担。最初から最後まで責任を持つのが建築士だから。それから、成案が固まりしだい、48時間以内に棟上げ完了すること。
家の設計に当たっては、いつかは今の家を別の誰かに売ることを念頭に置いておくように。その際は、できるだけ高く売れ。計画を仕上げる前に、近所の潜在顧客のニーズ調査を怠るなんてことは論外。
海外の先進事例は当然知っているよな? EUには大いに感銘を受けた。アメリカ並みの水準は必要。たとえば25mプールとか。建築士なら、こうした世界で一番高い品質を、世界で一番安い費用で達成するもの。
必要な青写真はすべて取り揃えておくこと。本番デザインはロハで。最終決定はこちらがするが、施工業者にまた説明するのも面倒だし。ただし、設計変更による追加費用は、すべて建築士の責任だということは、もちろん知っていると思うが。
建築士にとってこれほど魅力的なプロジェクトもそうはないはずだ! 最新の技術と部材を使って、自由に設計できるのだから。滅多にない機会だ。アイディアと完成済みの設計をもって今すぐ見せに来い。あ、でも積算上補助者がつくというのは何を考えているのだか。君一人で全部やる見積もりに直してからでいいから。それから、君の事務所から来る途中にコンビニがあるはずなので、何か食べるものを買ってきてくれ。おなかがすいちゃって。
追伸: 条例との関係で問題があるらしい。建築士なら、丸く納めてこい。コンセプトはまったく変えるつもりはないので、念のため。丸く納められないなら、君が勝手にやったことでこちらは何も知らなかったということで、差し止められるまでに急いで作ってくれ。
追々伸: もしかして、必要なのは家じゃなくてトレーラーハウスかもしれない。念のため、トレーラーハウスの設計も内々進めておくように。
