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  • 11/03/2007 (11:59 pm)

    高橋洋一さんへの苦言

    Filed under: treasury ::

    本来であればその著書「財投改革の経済学」を読んでから書くべき話ではあるのですが。

    まず政府資産・負債管理政策。ここにめっけものの数字がある。国の貸借対照表から浮かびあがる特別会計の「見えない資産」である。これまであるあると言われてきたが、霞が関の「隠しポケット」が、本書で裸にされている。かつて塩爺、こと塩川正十郎が言った「母屋(一般会計)でおかゆ、離れ(特別会計)ですき焼き」の実態はこれなのだ。

    高橋氏のデータは、05年4月27日の経済財政諮問会議で明らかにされた数字に基づいている。これは各特別会計について、継続中の事業をのぞき新規事業を行わないという前提ではじきだした資産負債差額(清算バランス)の推計額である。

    それによると、特会に隠された主な「見えない資産」、つまりプラスの清算バランスは

    財政融資資金特別会計53兆円(現在価値23兆円)
    国有林野事業特別会計4・5兆円(同4・5兆円)
    労働保険特別会計6・5兆円(同5・1兆円)
    空港整備特別会計2・3兆円(同1・9兆円)
    自動車損害賠償保証事業特別会計1・2兆円(同0・7兆円)

    (略)

    高橋氏は「離れですき焼き」は計50兆円規模とみる。民主党が知ったらほくそ笑むだろう。消費税1%引き上げで税収が1兆円の増収になるが、50兆円も「隠しポケット」に抱えていながら、一銭もたくわえを崩さずに消費税引き上げが通るはずもない。

    「高橋洋一「財政改革の経済学」のススメ 1」(@FACTA online/阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」11/2付)

    「計50兆円規模」の「離れですき焼き」が事実であるとして(おそらくは現在価値の足し上げでしょう)、その半分近くを占める最大のものは財政融資資金特別会計のものです。ではなぜそんなものが生じたのか、結論からいえば財政融資資金が大きな金利リスクを背負っているからです。2003(平成15)年度のものと若干古くはありますが、そのマチュリティーラダーやデュレーションギャップが示すのは、財政融資資金が長短金利差で利益を得ている‐わかりやすく言えば、短期資金を低金利で調達し、高金利の長期資金で運用しているため、その金利差が利益になっている‐という事実であり、「離れですき焼き」とは、その累積に他なりません。

    #デフレのため、中長期的なトレンドとして(名目)金利低下局面であったことが、上記利益をさらに押し上げていました。

    逆に言えば、金利が上昇して既往の長期運用の金利を上回るほど調達の短期金利が上昇したり、さらには逆イールドになりにでもすれば、多額の損失が財政融資資金に生じる可能性がある、ということとなります。直近の計数でどの程度のデュレーションギャップがあるかはわかりませんが、上記リンク先での1.35年(2003年末)が今なお妥当すると仮定すれば、2006(平成18)年度末の財政融資資金残高が300兆円弱ですから、金利が急激に(=ポートフォリオ組替えをする間もなく)3%ほど上昇すれば約10兆円の損失(時価評価の対象とならない貸付債権が過半ですから、正確には逆ザヤの現在価値+保有有価証券の評価損となります)が生じるわけです。これを考えれば清算剰余の現在価値23兆円とは、びた一文たりとも剥がせないということはないにせよ、大半は必要なリザーブだといえるでしょう。

    以上を受けての苦言ですが、高橋さんのご専門を考えれば、こうした事情を理解できないとは考えづらいでしょう。とすれば、本来はその中に「離れですき焼き」とは言いがたいものが含まれていることを承知で、50兆円もの「離れですき焼き」があるとのミスリードを行ったものと考えられます。これは決して褒められたこととは言えますまい。

    加えて、過去にさかのぼれば、高橋さんは次のようなことをおっしゃっていました。

    郵貯等の資金運用部への預託期間は7年であるが,資金運用部はより長期の期間で財投機関に資金を融資している。財投における長期資金の供給は,資金運用部(最終的には政府)が金利リスクを負担することによって可能になっているのではないかという議論がされてきた。しかし,高橋(1998)は,現在の資金運用部はALMによる金利リスク管理(短期資産の運用を同時におこなうこと)により,資金運用部に内在する金利リスクはほとんどないとしている。

    岩本康志「日本の財政投融資」(webmaster注:原文の注記は略しています。なお、「高橋(1998)とは、高橋洋一「財政投融資改革の方向」、岩田・深尾編「財政投融資の経済分析」pp175-243です)

    直接の引用でないのはご容赦いただければ幸いですが(手元にないので・・・)、「現在の資金運用部はALMによる金利リスク管理(短期資産の運用を同時におこなうこと)により,資金運用部に内在する金利リスクはほとんどない」という事実はないからこそ、上記のようなデュレーションギャップが生じているのです。高橋さんが財投を担当していらっしゃったころはきちんとALMができていて、その後金利リスクが急激に増加した可能性がないわけではありませんが、それこそ巨額の累積黒字の存在が、金利リスクをテイクしていたこと=「金利リスクはほとんどない」といえるほどのALMが実現できていなかった可能性を強く示唆します。

    #資金運用部(資金)=現在の財政融資資金となります。

    高橋さんが財政融資資金の累積黒字を難ずるのであれば、なぜそれが生じたのかについてもきちんと言及すべきでしょうし、となれば必然的に過去の上記のご主張は誤りであったと認めざるを得ないとwebmasterは思うのですが、いかがでしょうか。

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