大連立構想、民主党のトラウマと空気の読めない小沢代表
民主党の小沢代表は4日、福田首相との党首会談をめぐる「政治的混乱にけじめをつける」として、鳩山由紀夫幹事長に代表の辞職願を提出した。小沢氏はその後、緊急会見を開き、2日の党首会談後の役員会で連立政権に向けた政策協議入りを全員一致で拒否されたことは「不信任を受けたに等しい」と説明した。小沢氏の突然の辞意表明で、同党の混迷は必至だ。小沢氏は会見で離党は否定したが、小沢氏が安保政策での一致などを理由に与党との連携を目指すのではないかとの見方もでている。
小沢氏は記者会見で、首相が党首会談の中で「わが国の安全保障政策について、極めて重大な政策転換を決断した」ことを受け、「政策協議を始めるべきではないか」と役員会に提案したことを初めて明らかにした。
具体的には、首相が(1)「自衛隊の海外派遣は国連の安保理か総会の決議で認められた活動に限る」とする小沢氏の持論を受け入れた(2)連立政権が成立すれば補給支援特措法案の成立にはこだわらない――と確約したことをあげ、「我が国の無原則な安保政策を根本から転換するもので、それだけでも政策協議を開始するに値すると判断した」と語った。
参議院選挙直後に次のように書いたwebmasterとしては、具体的な事象としては驚きもありますが、大枠では了解可能な動きだと考えます。
具体的には累次の強行採決であり、既述の中間報告ですが、従来の自民党政権はおそらく、それらの「禁じ手」を使えば好き放題できることは百も承知で、有権者のニーズにも配意してその行使を必要最小限にとどめてきたわけです。ところが安倍総理は、有権者のニーズよりも自らのやりたいことを優先し、その結果が上記の「実績」ということになります。
今般の選挙結果により、今後はそのような「実績」の達成に歯止めがかかることになります。他方でもちろん、民主党(に代表される野党)は衆議院では少数派なのですから、これまた何らかの実績を作ることは困難です。これらによりもたらされるのは現状維持、すなわち与野党の現状変更の努力は相殺され、ポテンヒットのように現行の法制度が続くことが多くなる事態です。
このような構造を前提とすれば、次の衆議院総選挙までの与野党にとっての合理的戦略は、「必要な改革が与党(野党)のせいでできない」とネガティヴキャンペーンを張ることとなります。結果を誇る機会が減少する以上、結果を出せない責任を如何に回避するかが相対的に重要性を増すのは当然のことでしょう。
このネガティヴキャンペーンとして何を考え付くかという観点から与野党の行動を見れば、お互いに実に素直な動きをしています。すなわち、
- 与党
-
野党の言うことは何でも聞きますと表明し、にもかかわらず協力しない野党に問題があると主張する。
- 野党
-
具体案は出さずに政府・与党案を批判する。
というパターンがこの国会中に見られてきたわけです。若干付言すれば、与党がなぜ「野党の言うことは何でも聞きます」と表明できるのか(得たりと応じられては空振りになってしまいます)、もちろん上記のロジックに照らせばネガティヴキャンペーンができなくなってしまうということがあるのですが、ロジックを離れたものとして金融国会のトラウマがあるでしょう。小渕総理(当時)は金融再生法等につき実質的に野党案を丸呑みしたわけですが、そこが峠となり以後国会運営のイニシアティヴは与党へと移りました。民主党内の当時煮え湯を飲まされた面々にとっては、与党が丸呑みすると聞けば身構えて当然です。
加えて、単なる丸呑みに留まらず連立話で、これは自社さ連立を経て党を閉じざるを得なかった旧社会党・さきがけ出身者にとってのトラウマです。面白いことに、現在の民主党の主要メンバーである菅代表代行、鳩山幹事長、前原副代表の3人はこの2つのトラウマを抱えています。いくら魅力的な提案に見えたとしても、毒饅頭ではないかと警戒が先にたち、丸呑み・連立を受諾するとは感情的にも考えづらいのです。
民主党にとって不幸なことに、こうした局面において党首だったのが、かつてwebmasterが論じた(2003年、2004年)ように人情の機微に疎くおよそ政局に向いていない小沢一郎でした。政策が実現できるからいいではないか、と飛びついた結果がこれです。今回の騒動がどのような形で収束しようとも、政権奪取のモメンタムは遠く失われてしまったものと考えられ、上記のwebmasterの予測のごとく、これからひたすらに千日手が続く可能性が極めて高くなったのではないでしょうか。
蛇足ながら、千日手を回避するための奇策として、これまた民主党所属議員の多くのトラウマを掻き立てるであろうものがひとつだけあります。成功する確率はそれほど高くないかもしれませんが、今般の騒動の結果、洋上補給再開の目処が立たなくなったとして内閣総辞職してしまい、次の総理候補は立てずに民主党に政権を任せてしまうというものです。もう11月になっていますから、来年度予算案は大枠は現行方針でいくしかありません(今からゼロベースで作り直していては、来年度に間に合いません)。結果、民主党は、来年の1月には自分たちの意向を盛り込んだわけでもない予算を政府・与党として国会に提出する破目に陥ります。
下野したとはいえ自民党は衆議院で過半数を握っているわけですから、予算審議は思いのままです‐憲法上の予算審議に係る衆議院の優越が、ここでは重い意味を持ちます。大枠として現在の政府・与党が検討を進めていたものとはいえ、多少は民主党の独自施策に関連する予算も入ってくるでしょう。そこに難癖をつけて予算委員会で少数与党を袋叩きにして、最終的には予算成立を花道に民主党政権退陣に持ち込めば、おそらく民主党は今をはるかに上回る大混乱となってしまうに違いありません‐そう、細川政権崩壊後の当時の連立与党がそうであったように。
