続・「ワークブック法制執務」改訂
昨日のエントリに対して、kei-zuさんから言及いただきました。
自治体の職員の方々におかれては、むしろ
作者: 石毛正純
出版社/メーカー: ぎょうせい
発売日: 2004/07
メディア: 単行本の方がスタンダードであろうと思うところで、課内で法制執務を担当して間がない後輩に聞いてみたやり取りは以下のとおりです。
私「改め文を書くときに『ワークブック法制執務』って読むかい?」
後輩(女性)「『法制執務詳解』は参考にしますけどぉ、『ワークブック法制執務』は読んだことありませぇん」(そういう風に喋る人なのです)
「法制執務詳解」がかくも自治体法務職員の頼りにされている理由は、昭和58年に初版が発行されて以来、4回の改訂を経て、内容がアップデートされていることと、掲載例の網羅性、そして引きやすい目次構成によるものでしょう。
同僚「『ワークブック』って、調べたいことがあっても引きにくいじゃないですか。国で、法令改正の初心者の人は、どうやって改め文を書くんですかね」
私「うーん、『ワークブック』を見ながらとりあえず書き上げて、先輩にガシガシ修正を受けるOJTなのかなあ」
「「ワークブック法制執務」と「法制執務詳解」」(@自治体法務の備忘録11/28付)
「法制執務詳解」は読んだことがないのですが、「ワークブック」が霞が関スタンダードなのは、ひとえに内閣法制局を相手にするときにもっとも有効だからに他なりません。条例の事例を引いても内閣法制局では相手にしてもらえませんから(それどころか、法律であっても、議員立法のものは、それしか例がないような場合にのみやむなくという感じで、可能な限り内閣提出法案の事例を用いることが望ましいとされます)、「法制執務詳解」では実際に使える部分が限られるということでしょう。
霞が関での改め文の学び方は、たいていはOJTです。まったく条文作成の経験がない者が「ワークブック」を引きながら、ということではなく、自分が係長時代に補佐が書いた条文案の法制局審査に同席し、そこでのやりとりを聞きながら学んでいく、ということが多いように思います。補佐が教育的配慮に富んでいる場合は、「じゃあここの部分を書いてみて」と下請けに出して学ばせたりすることもあります。
ちなみに昨日のエントリにて、「ワークブック」も時代遅れの部分があると書いたわけですが、
また、「法制執務詳解」では、著者が属される自治体のローカルルールなのか、独自のご見解と思われる記載もあり、利用に当たっては注意も必要です。
「各号列記以外の部分中」は、そこで改正しようとする字句が同一条項中の他の部分にもあり、その部分の字句は改正しない場合のように、これを用いるほかに方法がないやむを得ない場合に限り、用いるものとされている(中略)。このため、法令における取扱いは、このような場合、「各号列記以外の部分中」を用いない方式によるものが多いようである。しかし、条項中の字句の改正は、前の方から順に行われている方が、改正箇所を知る上で利点があるので、各号列記以外の部分と各号中の双方の字句を改正する場合には、前の方から順に改正を行うために改正箇所を特定する手段として、「各号列記以外の部分中」を用いる方が適当であろう。
(336〜337頁)※強調はkei-zu
同書は次回の改訂に改訂に際しては、多くの自治体で運用されている横書きの例規を想定したものとすることが検討されているそうであり、そうなると、自治体職員向けの性格がより明らかになるでしょうね。
「「ワークブック法制執務」と「法制執務詳解」」(@自治体法務の備忘録11/28付)
この「各号列記以外の部分中」こそが、webmasterが念頭に置いていたものでした。なんという偶然でしょう! といっても訳が分からない人が大半でしょうから、詳しく書いてみます。行政事件訴訟法の一部を改正する法律(平成16年法律第84号)の附則第9条(地方自治法の一部改正)の中に、次のような規定があります(ということは、webmasterがお相手いただいた参事官の方が間違っていた、ということに・・・まあ、できるだけ使わないように、ということになっているのだと思います。「法制執務詳解」においても、法令としては「これを用いるほかに方法がないやむを得ない場合に限り、用いるものとされている」とのことですし)。
第251条の5第1項各号列記以外の部分中「行政庁」の下に「(国の関与があつた後又は申請等が行われた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)」を加え、同項に次のただし書を加える。 ただし、違法な国の関与の取消しを求める訴えを提起する場合において、被告とすべき行政庁がないときは、当該訴えは、国を被告として提起しなければならない。
他方、現行の地方自治法第251条の5第1項は次の通りです。
第251条の5 第250条の13第1項又は第2項の規定による審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関は、次の各号のいずれかに該当するときは、高等裁判所に対し、当該審査の申出の相手方となつた国の行政庁(国の関与があつた後又は申請等が行われた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)を被告として、訴えをもつて当該審査の申出に係る違法な国の関与の取消し又は当該審査の申出に係る国の不作為の違法の確認を求めることができる。ただし、違法な国の関与の取消しを求める訴えを提起する場合において、被告とすべき行政庁がないときは、当該訴えは、国を被告として提起しなければならない。
一 第250条の14第1項から第3項までの規定による委員会の審査の結果又は勧告に不服があるとき。
二 第250条の18第1項の規定による国の行政庁の措置に不服があるとき。
三 当該審査の申出をした日から90日を経過しても、委員会が第250条の14第1項から第3項までの規定による審査又は勧告を行わないとき。
四 国の行政庁が第250条の18第1項の規定による措置を講じないとき。
両者から、行政事件訴訟法の一部を改正する法律による改正前の条文を復元すれば次のようになります。
第251条の5 第250条の13第1項又は第2項の規定による審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関は、次の各号のいずれかに該当するときは、高等裁判所に対し、当該審査の申出の相手方となつた国の行政庁を被告として、訴えをもつて当該審査の申出に係る違法な国の関与の取消し又は当該審査の申出に係る国の不作為の違法の確認を求めることができる。
一 第250条の14第1項から第3項までの規定による委員会の審査の結果又は勧告に不服があるとき。
二 第250条の18第1項の規定による国の行政庁の措置に不服があるとき。
三 当該審査の申出をした日から90日を経過しても、委員会が第250条の14第1項から第3項までの規定による審査又は勧告を行わないとき。
四 国の行政庁が第250条の18第1項の規定による措置を講じないとき。
ここで、行政事件訴訟法の一部を改正する法律の地方自治法の改正規定に「各号列記以外の部分中」がない場合を想定してみますと、第2号や第4号の「行政庁」の下にも「(国の関与が・・・)」と加えられてしまって都合が悪い、ということとなります。では、「各号列記以外の部分中」を使わずに同じ改正を行う(=webmasterが当時参事官の指摘を受けて書き直したやり方でやる)場合にはどうすればいいのでしょうか?
第251条の5第1項中「行政庁を」を「行政庁(国の関与があつた後又は申請等が行われた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)を」に改め、同項に次のただし書を加える。(ただし書略)
とすればよいのです。同項第2号は「行政庁の」、第4号は「行政庁が」ですから、これらの号まで改正されてしまうことはこの書き方で回避できます。すなわち、これで同じ改正が可能となるのです。
