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  • 12/08/2007 (11:59 pm)

    「霞が関埋蔵金伝説」について:各論(前編)

    Filed under: treasury ::

    それでは、今日明日と発端となったBaatarismさんのエントリを順に取り上げたいと思います。今日は「霞が関埋蔵金伝説を追うw」、明日は「民主党が赤字国債の発行を止める!?」となります。Baatarismさんは、最初に中川前自民党幹事長が言及する財政融資資金特別会計と外国為替資金特別会計について触れ、中川(秀)氏は「埋蔵金」かどうか疑いがある特別会計をわざわざ取り上げてしまっているように思えますとの見解を示されています。

    このご見解にいたる過程において、財政融資資金特別会計についてのwebmasterの議論を引いていただいているのに恐縮ではありますが、これらについては一般会計との連結ベースで考えれば、特別会計の純資産をリスクバッファーとするのか(財政融資資金特別会計については金利リスク、外国為替資金特別会計については為替リスク)、それとも一般会計(つまりは税収)をリスクバッファーとするのかの違いに過ぎませんから、「総論」で書いたように国債発行額の名目額を減らすことを至高の目的とするのであれば、政治判断マターだとはいえます‐もちろんアカウンタビリティの観点からは、少なくともリスクバッファーとしてどの程度が適当かの議論を欠いたままそうするのであれば、望ましいとは言いがたいことではありますが。

    #細かい違いをいえば、財政融資資金特別会計については、理論的にはALMによって金利リスクを回避してリスクバッファーを不要のものとすることが可能ですが、外国為替資金特別会計については、必ずリスクバッファーが必要だ、ということはいえます。為替介入とはドルのロングなりショートなりのポジションを取ることであり、それをヘッジするとは、現物を用いようとデリバティブを用いようと、逆のポジションを取って介入効果を中立化することに他なりませんので。

    実際には、財政融資資金特別会計については、

     額賀福志郎財務相は六日、二〇〇八年度予算編成で財政融資資金特別会計(財融特会)の積立金(〇八年度末で約二十兆円の見通し)の一部を取り崩し、国債の返済に充てる方針を明らかにした。〇八年度の取り崩し額は十兆円規模とみられ、〇九年度以降も年間一兆−数兆円を返済に回す見込み。国債発行残高を減らし、利払い費を抑える。

    東京「財融特会10兆円取り崩し 財務相方針 『埋蔵金』国債返済に」

    と決まってしまったようですが、これについては記者会見で次のような面白いやりとりがなされています。

    問) 先程の財政融資の特別会計の積立金取り崩しなんですけれども、それを取り崩して国債の発行残高は確かに減るとは思うんですが、例えば企業で言うところの連結ベースで見ると、資産が減って、負債が、両建てで減るというだけなんで、本当に財政再建に資するのかなという素朴な疑問もあるんですが、これについて如何なんでしょうか。単に付け替えだけで終わるんじゃないかというような気がするんですが…。だからこそ、今までは財務省はここの部分について慎重に扱っていたはずなのに、この辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。

    答) 財政融資特会のことは、昨日も申し上げましたけれども、平成13年以来の財投改革をずっと続けて来て、激変緩和の7年目に当たるタイミングで今後の展開を考えていった時に、変動リスクが縮小されていく中で一定の利益を出しているので、これを法律に基づいて国債整理基金に入れて、財政再建に役立てていくということで、準備金の積み立ての基準を、今、どの程度にするかを考えているということでございますので、これはやっぱり、我々は一定のストックはストックで、きちっと財政再建に役立てていくということも法律にも書いてありますし、そういうことが適切なのではないかという判断をしておるわけです。

    問) それはおっしゃるとおりだと思うんですけれども、要は、国の予算の、親会社みたいなところの決算を良くするのか、子会社みたいなところの決算を厚く、お金をキャッシュを持っているのかという、それだけの違いのような気もしますね。例えばこういうことがあると、結局、ああ、財政再建というのは、財務省が今まで隠していた埋蔵金みたいなものを発掘すれば、何とかやっていけるんだみたいな幻想を与えるようなことにはならないですか。

    答) いや、それは、例えば、財政融資特会だって、外部環境に支えられて利益を生み出しているところもあるわけでございます。金利が動けば、これは逆ザヤになる場合だってあるわけでございますから、そこはちゃんと、我々も両面、危機管理的にきちっと対応していく中で判断をしていかなければならないのは当然であります。その中で、財政再建というのは、日本の信認を得ていくためにやっぱり必要不可欠な手段でありますから、国際的なメッセージとしても私は大切なことであるので、フローで色々と、なかなか容易じゃない時に、そういう残高を解消していく。本当は、もうちょっと景気が良くて、プライマリーバランスにも役に立っていくような形になるのは最も望ましいんだけれども、しかし、全体的なメッセージとしては、その残高を減らしていく日本の姿勢というものが、一定の評価を受けることになるんだろうというふうに思います。

    額賀財務大臣閣議後記者会見の概要(12/7)(webmaster注:強調はwebmasterによります)

    強調部分の「残高」とは、当然ながらグロスの残高を指しているわけで、この「埋蔵金」問題が財務省の理屈の中での論争に過ぎないことをよく表しています。

    他方でこれら以外の「埋蔵金」について、Baatarismさんは以前webmasterも引いたFacta onlineのエントリをベースに議論されています。改めて関係部分を引用すれば次のとおりです。

    まず政府資産・負債管理政策。ここにめっけものの数字がある。国の貸借対照表から浮かびあがる特別会計の「見えない資産」である。これまであるあると言われてきたが、霞が関の「隠しポケット」が、本書で裸にされている。かつて塩爺、こと塩川正十郎が言った「母屋(一般会計)でおかゆ、離れ(特別会計)ですき焼き」の実態はこれなのだ。

    高橋氏のデータは、05年4月27日の経済財政諮問会議で明らかにされた数字に基づいている。これは各特別会計について、継続中の事業をのぞき新規事業を行わないという前提ではじきだした資産負債差額(清算バランス)の推計額である。

    それによると、特会に隠された主な「見えない資産」、つまりプラスの清算バランスは

    財政融資資金特別会計53兆円(現在価値23兆円)
    国有林野事業特別会計4・5兆円(同4・5兆円)
    労働保険特別会計6・5兆円(同5・1兆円)
    空港整備特別会計2・3兆円(同1・9兆円)
    自動車損害賠償保証事業特別会計1・2兆円(同0・7兆円)

    (略)

    省庁はこうした特会の隠し資産を手付かずにしておいて、一般会計から国費を繰り入れている。高橋氏の指摘では、労働保険特会は資産負債差額4・2兆円は、責任準備金8・0兆円に対し50%以上あり、保険料が高すぎるおそれがある。空港整備特会も同じだ。資産負債差額が2・3兆円もあるだけに、一般会計からの繰入額も空港使用料も「ぼったくり」の可能性があるという。

    「高橋洋一「財政改革の経済学」のススメ 1」(@FACTA online/阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」11/2付)

    当該部分より、Baatarismさんはただ、高橋氏が指摘しているが中川(秀)氏が指摘していないその他の特別会計については、納得できる反論が行われない限り、「埋蔵金」と言われても仕方ないでしょうとのご指摘を導かれていますが、しかしよく見れば、上記引用部分に、「納得できる反論」が既になされているのです‐それは、「保険料が高すぎるおそれがある」「一般会計からの繰入額も空港使用料も『ぼったくり』の可能性がある」という部分です。

    すなわち、仮に特別会計の財源に余裕があるとしても(といっても、高橋洋一さんの試算は新規業務を停止した場合のものですから、これが正しいとしても、業務を継続する際にどれだけの余裕があるかは別途試算する必要がありますが)、その余裕は特別会計に係る国民負担の軽減に回すべきであって、一般財源として用いるのは筋が違うということです。参議院選挙の勝利を受けて民主党が提出した法案に年金保険料流用禁止法案がありますが、これが参議院選挙において一定の有権者の支持を集め推進すべきだというのであれば、年金だけを特別扱いする理由はなく、他の特別会計とて同様に考えるべきでしょう。

    #年金保険料流用禁止法案は、制度運営経費すら一般財源でまかなえというものですが。

    しかし現実を考えれば、道路特定財源に明らかなように、このような理屈ではなく「財政危機だ!」のプロパガンダに基づき一般財源への充当を正当化する言説が世にあふれているわけですから、一般財源化される可能性は低いものではありません。今はちょうど来年度予算案の折衝の大詰めの時期ですが、主計局の担当者がここで挙げられているような特別会計の担当者に対して、「財政融資資金特別会計はきちんと一般財源に協力したのだから、お前らもそうすべきだ」などと言っている姿が目に浮かぶのです。

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    2 Responses to “「霞が関埋蔵金伝説」について:各論(前編)”

    1. Baatarism Says:

      なるほど、ご指摘の点については見落としていました。
      考えてみれば高橋洋一氏も元大蔵省の人ですから、可能であれば財政赤字を減らしたいという考え方なのでしょうね。

    2. webmaster Says:

      >Baatarismさん
      明らかならざる個人の内面をあまり斟酌しても仕方がありませんが、ひとつだけいえるのは、そもそも特会の剰余金等とは無関係に用いられていた「埋蔵金」という言葉を、本件の文脈に再定義したのは中川前幹事長だ、ということです。高橋さん個人がどうであれ、一定の政治的意味を持つ主張であることからは逃れられないわけで、郵政民営化のときはそうした文脈にあることを認識して疑問を呈する人も少なからずいたのに、本件についてはそうではないなぁ、と個人的には思ってます。

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