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  • 12/29/2007 (11:59 pm)

    2007年を振り返る(2)‐新刊書トップ10

    Filed under: book ::

    第10位 寒川旭「地震の日本史」

    webmasterがよく知らない分野の本だったので、新しい知識を数多く教えてもらいました。江戸末期の大地震の頻発を通して幕末維新を見ると、天変地異を為政者の責任とみなす感情がいくばくかの影響を与えていたのでは、という気がしてきます。

    第9位 飯田泰之「考える技術としての統計学」

    本書のとある部分が、webmasterが現在抱えている課題への対応を考える際に大いに役立ち、安心して新年を迎えることができそうです。多謝!

    第8位 ジョセフ・E・スティグリッツ「スティグリッツ教授の経済教室」

    スティグリッツ節を堪能したい人にとっては安心して手に取れる一冊。ただ、元が雑誌連載コラムであるからでしょう、結論に至る論証が手薄な面があるのは否めません。webmasterにとって気になったのは、温暖化ガス対策として排出権取引よりも環境税に軍配を挙げている点で、なぜそのように考えられるのかをもっと聞いてみたいと思うのです。

    第7位 小西砂千夫「地方財政改革の政治経済学」

    豊かな地方公共団体に貧しい地方公共団体を支援するインセンティヴはないので、相互扶助という将来像のコンセプトには同意できませんが、現状分析については同じテーマの諸書の追随を許しません。地方財政問題にご関心のある方々にはぜひとも目を通していただきたいと思います。

    第6位 小野善康「不況のメカニズム」

    おそらくwebmasterにとってもっとも摂取すべき内容ですが、いかんせん知識や能力の不足のため、うわっつらしか理解していないのだろうなぁ、と思います(数理モデルとしての経済モデルを組むことで悪戦苦闘した経験がある人だけが、この本の価値がわかり、また実際に役立てることができるのだ小島寛之先生もおっしゃっていますし)。本書を第1位に挙げられるだけの人間であれば、と。

    第5位 安達誠司「円の足枷」

    昨年第2位の「脱デフレの歴史分析」に続いてのランクイン。来年も勝手に期待してしまいます。(3/10に取り上げました。)

    第4位 石渡嶺司「最高学府はバカだらけ」

    タイトルでふざけた本のように思われてしまう可能性があるのが残念ですが、その内容は、現在の日本の大学が置かれた状況を見事に描き出しています。ジャーナリストかくあるべしと申しますか、次には文部科学省や教育学者の真摯な対応策の検討が求められると申しますか。

    第3位 飯田泰之「歴史が教えるマネーの理論」

    昨年のランキングにて第1位の竹森俊平「世界デフレは三度来る」について書いたように、webmasterは経済と歴史を重層的に描くものが好きなのです。まるでオーダーメイドで書いていただいたようなうれしい内容でした。(8/21に取り上げました。)

    第2位 大沼保昭「「慰安婦」問題とは何だったのか」

    慰安婦についての書物として以上に、政党や政府の関係者以外の者が政策を実現していく過程を描いた書物としての価値が大きいでしょう。webmasterは寡聞にして類書を知りません。(7/3に取り上げました。)

    第1位 蒲島郁夫、竹下俊郎、芹川洋一「メディアと政治」

    ネットとの関係においてメディア批判が喧しい昨今ですが、そうした議論をする際の必読書です。(5/6に取り上げました。)

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    12 Responses to “2007年を振り返る(2)‐新刊書トップ10”

    1. yy Says:

      「スティグリッツ教授の経済教室」はなかなか面白かったですね。マネタリズム批判、グリーンスパン批判という流れは、最近のクルーグマン教授の方向性と似てるなーとか思いつつ読んでました。
      マネタリズムよりはマシとしつつも、インタゲ批判も入っていましたが(笑)

      排出権取引より環境税に軍配を上げて(≠挙げて)いるのは、排出量の削減義務が課されていない国がある場合、エネルギー集約的な産業がそれらの国に移転することによって、結果的に世界の排出量が削減されない場合を想定しているからではないでしょうか(50ページ参照)。

    2. webmaster Says:

      >yyさん
      をを、見落としていましたorz。

      しかし読み直しても、キャップ・アンド・トレイド批判にはなっても、排出権取引への批判には不十分だなぁ、と改めて思いました。CDMで実際に中国で排出量削減が進んでいたりする事例もあるわけで、削減義務のない国でも売れば金になることから、排出権取引の枠組みにおいて十分に自主的に削減は進むと思いますので。

      ちなみにインタゲ批判は、ご高察いただいていると存じますが、アヴェイラビリティを考慮した金融政策>>インタゲ>>マネタリズム>>日銀の実施している政策ですから、現状の日本に照らせば、80点は100点より低くても0点よりは高い、ということでしょう(笑)。

    3. yy Says:

      推測するに、排出権取引は各国の自主性に頼る部分が大きく、また植林には見返りがあっても既存森林の保護には見返りがない等の問題もあり、不十分な方法だと考えているのではないでしょうか。
      それよりも、グローバルな炭素税制度により、各経済主体に直接かつ強制的に削減へのインセンティヴを与える方が、二酸化炭素排出量の削減には有効だと考えているのではないでしょうか。

      インタゲについては、スティグリッツ教授には手ぬるく見えるのでしょうね。言及部分は忘れましたが、ECBがインフレ率だけに着目していたために、金融緩和すべきところで緩和しなかったという批判もありましたし。
      余談ですが、私は氏の政府紙幣発行策に賛成です。
      世間的には評判が良くないようですが、金融政策だけでなく、国家債務の削減や財政政策も併用できるというのは、大きな利点ではないかと。

    4. webmaster Says:

      >yyさん
      役人的には、実際に動いている排出権取引に肩入れしたくなってしまうものです(笑)。グローバル炭素税は、非関税障壁だなどといってWTOのラウンド交渉に持ち込まれれば、それだけで数年単位で実現が遅れることになってしまいますし。ま、根本的には、あるべき税率(=新たなコスト)の適正性が市場価格より怪しいのでは、とも思いますし。

      政府紙幣については、財務省の臆病さが導入に係る最大の障壁ではないかと思います。彼/女らは、そんな財源ができたら歳出拡大要求がとめどなく拡大して収拾がつかなくなると思っているでしょうから。

    5. yy Says:

      財務省の心配もあながち杞憂とは言えない気もします。一度それが通ってしまえば、その後は財源不足という錦の御旗が絶対のものではなくなり、政治家サイドからの歳出拡大要求がきつくなるのは間違いないでしょう。
      まあ、政府紙幣発行は実際にやるなら、その場限りの緊急策として、乱用を厳に戒める必要はあるかと思います。

      あと、インタゲにしても政府紙幣にしても、最大の障壁はむしろ国民全般に根深く存在する「日本の経済不振は構造的問題だから、痛みの伴う改革なくして経済成長はない」という観念ではないでしょうか。
      どうも日本人にはそちらの方がしっくりくるようで、インタゲや政府紙幣のような政策は胡散臭く思われているような気がしてなりません。
      数年前、「ファイナンス」に元大蔵官僚の方が「今の日本経済が日本の実力なんだ。日本人は努力不足だ」なんて論説を書いてあるのを見て、官僚の世界でもそういう観念は根強くあるのかなどと思ってしまいました。

    6. webmaster Says:

      >yyさん
      その観念についてのご指摘は、おっしゃるとおりだと思います。霞が関にもその手の考えの信奉者が多いというのは、私の半径5mでは真実です(個人的にはきわめて残念なことに)。

    7. 鍋象 Says:

      「構造的問題」ってのが何なのか良くわからないですよね。もっと具体的各論の議論してくれれば良いのに、なんかアドバルーンばっかり。

      というか、多分、話者や賛同者は、自分が直面している各種ジレンマや袋小路的状況に対する絶望感を構造的問題という言葉に仮託していて、構造問題を語るふりして個人的不満をぶちまけているだけじゃないかと思ったりして。裏読みしすぎかな。

    8. webmaster Says:

      >鍋象さん
      三輪先生の著作にきちんと反論できる「構造問題」主義者を私は知らないのです(笑)。

    9. yy Says:

      最近のマスコミに多い「改革が停滞しているから経済の先行きが不安」という論調は、まさにそういった抽象的構造問題論ではないかと。
      改革はいいから、そろそろ具体論を聞かせてもらいたいと言いたくもなります。
      「小さな政府」「地方分権」とスローガンは飛び交っていますが、それが具体的にどう経済成長につながるのかという実証分析も不十分に感じますし。
      特に「小さな政府」は、財政支出の削減を意味するのだとしたら、デフレ脱却にマイナスに働くことはあっても、プラス方向に働くとは思えませんし。

      ところで、「バブルへGO!」さっきテレビで見ました。タイムマシン用のスーツの胸に、燦然と輝く「MOF」の3文字が(笑)

    10. webmaster Says:

      >yyさん
      福田内閣になって、あれは小泉・安倍路線とは違うという格好のキャッチコピーが出回っていますからねぇorz。

    11. 鍋象 Says:

      ぶっちゃけ、「日本の市場は透明性が足りないから株価が下落するんだ」という論調の人がいて困ります。どう考えても上海よりはずーーーーーーーーーーっと透明だろうと。
      お金は、ちょっと有能な人なら気が付く程度のインチキがまかり通る市場に集まるのですよと。

    12. webmaster Says:

      >鍋象さん
      ま、上海との対比については、期待リターンに比して、と好意的に考えれば正当化も不可能ではないのだと思います。

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