toppage memoranda
(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2007-01-06
■ [economy]竹中平蔵先生の自家撞着
何が自家撞着かといえば、個別の事項についての正しい指摘が、引き続いての改革が必要との中心をなす主張の根拠を自ら否定してしまっていることを指しています。対象は「2007年を斬る: 竹中平蔵からの直言/貪欲なまでに「成長」を追求する気迫を忘れるな!」なのですが、個別の事項についての正しい指摘とは、
- 日本の潜在成長率+国際的に見て平均的なマイルドインフレを実現すれば、増税なしで財政再建が可能、
- インフレターゲティングを導入すべき、
- 多重債務問題について上限金利規制で対応するのは間違い、
といったところです。これらは当サイトでも繰り返し申し上げていることで、webmasterも諸手を挙げて賛成する主張です。このうちの第1点が改革が必要との主張の根拠を否定しているのですが、まずは具体的な表現を見てみます。
NBO 竹中さんは、名目で4%の経済成長率を維持できれば消費税を上げなくてもプライマリーバランス(基礎的財政収支)はゼロに持っていけるとおっしゃっていますね。
竹中 必ずしも4%なくてもいいですよ、3%台だっていいんです。日本は既に実質成長率2%強ぐらいの成長率まで回復しているんです。OECD(経済協力開発機構)のGDP(国内総生産)デフレーター、つまりインフレ率は平均2.2%です。今の実質経済の状況に、OECD平均の、つまり“人並み”のデフレ克服、インフレを加味すれば、3.6%とか4%の成長はできるんです。私は普通のことをやってほしいと言っているだけなんです。
「2007年を斬る: 竹中平蔵からの直言/貪欲なまでに「成長」を追求する気迫を忘れるな!」(1/4)
現政権において構造改革が必要である根拠とされているのは、現在の日本の潜在成長率は1%台しかないので、1%程度のインフレ率を前提とした場合、名目で3%以上の成長率を実現するためには、潜在成長率を2%台まで引き上げる必要があるというものです。現状の分析として潜在成長率推計が適正かどうかについてwebmasterには異論がありますが、その前提を受け入れるならば、潜在成長率を引き上げるための施策=構造改革が必要だという政策割当ては妥当といわざるを得ません。
#その場合であっても、中身が構造改革=潜在成長率の引上げを目指すものとして適当かどうかについては議論があり得ますが。
しかし、竹中先生は潜在成長率(という単語は用いていませんが、「実質成長率2%強ぐらいの成長率」という表現の含意はそう理解してよいでしょう)を引き上げなくとも、名目4%成長は可能だとされているわけです。もちろん潜在成長率を高め得る諸施策は恒常的に推進していく必要があるでしょうけれども、改革だと大上段に振りかぶって行うような話ではないはずです。竹中先生は何をどうしようとおっしゃっているのでしょうか?
本テキストで具体的に言及されているのは、歳出削減が中心であるように見えます(たとえば今回の予算について新聞は非常に厳しい評価をしていますが、私はよくできていると思います。もちろん税収が増えたために組みやすかったということはありますが、小泉路線の歳出削減をきちんと踏襲しています
(2ページ目)など)。竹中先生は経済財政政策担当大臣時代、財政再建にはまず歳出削減を、と主張されていたわけですから、確かに以前の言動と整合的ではあるのでしょう。
現政権での認識はといえば、少し前に紹介しましたが、平成19年度予算を前提としたプライマリーバランス赤字は9.5兆円と推計され、その解消は歳出削減のみで可能で増税が不要になってしまうのではないかという議論がありました。ふむふむ、竹中先生のご主張は現政権のスタンスとも軌を一にしているなぁ・・・とは問屋が卸しません。なぜなら、現政権の数字の前提にあるのは、2011年度に名目成長率が3%に達するという見込みだからです。
本テキストにおいては、竹中先生は次のようなことをおっしゃっています。
NBO プライマリーバランスの回復を計画よりも前倒すというような話が出てくるのは、増税派に対する牽制なんですね?
竹中 もちろんそうでしょう。経済というのは、ちょっとした傾きの変化で2年後、3年後の姿が大きく変わってくるんです。GDPの成長率が1%違うと、10年度のGDPは10%、つまり50兆円にもなる。GDPが50兆円増えると税収は8兆円増える。消費税に換算すれば4%分です。成長率が1%高まれば消費税を4%引き上げなくていい。逆に成長率が1%下がれば消費税を4%引き上げなければいけなくなる。だから、成長を追求するということは大事なんです。
「2007年を斬る: 竹中平蔵からの直言/貪欲なまでに「成長」を追求する気迫を忘れるな!」(3/4)
2%強の潜在成長率に2.2%のGDPデフレータを足して、名目4.5%成長とすれば、2011年度に達成ではなく2007年度から名目3%成長というのが政府の立場だったとしても、1.5%ポイントの差が5年間にわたって継続することになります。竹中先生と同様に発射台となる名目GDPを500兆円(2006年度)と置くとしても、この成長率の差が生み出す名目GDPの差は、2007年度の7.5兆円に始まって2011年度には43.5兆円に達し、5年間の累計では124.2兆円にも上ります。
竹中先生がおっしゃるようにGDP50兆円当たり8兆円の税収増とすれば、5年間の税収増は19.9兆円になりますから、歳出削減どころか10兆円以上の歳出拡大をしたところで、プライマリーバランス赤字は解消可能ということになってしまうわけです。改革なんて、少なくとも改革のモメンタムが本物かどうかという問いに対する明確な回答も求められます
(4ページ目)というほど重要なテーマではないということを、間接的に証明してしまっているようにしか見えないのですが・・・。
このように読み解いていると、本テキスト、一見すると安倍政権にエールを送っているかのような感が漂うのですが、実ははしごを外しまくってるのでは(笑)。裏にどのような事情があるかはわかりませんが、意図的にはしごをはずしているのであれば、それがために自らの主張にも矛盾をきたしてしまっているわけで、人を呪わば穴二つといいますか。