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2007-01-25
■ [government]夕張市への裁量的支援策と総務省批判
先日懸念したとおり、ナショナルミニマムをどうすべきかという広範な議論のないまま、泥縄的かつ場当たり的に夕張市に対する国の支援が固められました。
総務省は二十二日、財政再建団体入りする夕張市に対する支援策を固めた。道が同市への財政支援の軸にする三百六十億円の低利融資をめぐり、金利1・5%の三分の一に当たる0・5%を国が負担する。また石炭博物館の存続に向けて国が協力する。同省は夕張市が職員人件費削減などの経費削減努力を十分に行っていると評価し、財政支援などに乗り出すことに踏み切った。
道は夕張市の二○○六年度赤字決算の全額に当たる約三百六十億円を市の代わりに金融機関から調達してまた貸しする。財政破たん状態にある市が直接調達するより金利を1%以上軽減できる効果がある。道が資金調達する際の金利は年1・5%だが、市には0・5%で貸す。この差1%のうち、国は0・5%に相当する金利額を特別交付税として道に支給し、国と道と市が0・5%ずつ負担するかたちにする。
石炭博物館は、道内の観光業者や市民有志らが運営の継続を探っている。総務省は展示施設を維持するための補助金支給などを検討し、民間業者らが施設の運営に参加しやすい環境をつくる考えだ。
また総務省は、市が昨年十一月に策定した再建計画枠組み案では、お年寄りと子供へのしわ寄せが厳しいと判断。市が二月にまとめる再建計画案では、高齢者向けバス料金の補助制度の存続や小中学校統合の先送りなどの修正を認めることを決めた。これに関連して安倍晋三首相は二十二日夜、官邸で記者団に「政府としては子供たちやお年寄りに影響がないように配慮をしなければならない。住民の皆さんが将来に夢や希望を持てるように地域の再生にも力を入れていく」と述べた。
菅義偉総務相は23日の閣僚懇談会で、財政再建に取り組む北海道夕張市に対する支援を関係省庁に要請した。雇用対策や中小企業対策、観光振興などの施策を同市で重点実施することを念頭に置いている。同市の再建では北海道が低利融資などの支援を表明済み。総務相は閣議後会見で「総務省も道に協力していきたい」と述べ、財政的な支援も含め検討していることを明らかにした。
夕張市は昨年末に財政再建の基本的な考え方をまとめたが、負担の急増に住民が反発。今年に入り、住民負担の軽減策を打ち出した経緯がある。総務省は同市に全国最低水準まで行政サービスを切りつめるよう求めていた。
まずは支援の内容に問題があるでしょう。具体的に指摘するのも品のない話ではありますが、石炭博物館は到底ナショナルミニマムだとは思えません。仮にその内容が文化振興等の観点から意義があるというのであれば、そもそも昨年10月に休館した時点でそのような話が出てこないのはおかしな話ですし、なぜ文部科学省の補助金でないのか、ということもあります。
まして、総務大臣の呼びかけに答えて各省庁が公共事業や補助金において夕張市関連の案件を優先採択するようなことがあれば、各事業の政策目的とは異なる観点で優先順位をつけるということになるわけですから、その運用のあり方としてほめられた話にはなりますまい。政策目的実現の観点からは、より効率的・効果的と考えられる案件が、予算制約に服する中で、よりそれらに劣る夕張市の案件に押し出される可能性が出てくるからです。
これら以上に深刻足り得るのは、モラルハザードの問題です。引用した日経の記事にもあるように、総務省は全国最低水準まで行政サービスを切り詰めるよう求めていたとのことですが、今般の支援によりそれよりは上の水準になるということは、裏を返せば支援を受けた夕張市よりも行政サービス水準が低い地方公共団体が存在するということに他なりません。
そうした地方公共団体には、当然ながら報道のような支援措置は講じられません。であるならば、財政破綻しないように頑張るのが馬鹿馬鹿しいということになってしまうでしょう‐破綻すれば支援が得られ、行政サービス水準が上がる可能性があることになるのですから。少なくとも経済合理性だけを考えるならば、今般の措置は地方公共団体の財政規律を緩める方向に働くことは必定です。
少し前に金融機関に公的資金が導入された際には、さかんにモラルハザードが語られましたが、あちらの場合は経営者に民事(賠償請求)・刑事(背任罪、証取法違反等に係る告訴)上の責任追及がなされており、モラルハザードを抑止していました(預金者には確かにモラルハザードが生じていたでしょうけれど)。他方で、地方公共団体にはそのような枠組みはないので、財政破綻のレッテルを貼られることはプライドが許さないとか、その程度のものにしか頼れません。
こんなことをやらかす総務省が、他方で財政破綻状態の地方公共団体について、財政規律を高めるために債権カットを認める法制を検討しようというのは、支離滅裂であるとしか評することができません。債権カットを認めれば貸し手が地方公共団体をチェックするのだという理屈を捏ねているようですが、マッチポンプもほどほどにしろということでしょう。そんなことをする前に、今般の措置がどれだけ財政規律に悪影響を与えるのか、よくよく省みて欲しいものです。
といいますか、報道のとおり夕張市が財政破綻を理由に金利格差が付けられているのならば、債権カットを導入するまでもなく貸し手のチェックは(部分的ではあるかもしれませんが)働いているということになるのですが(笑)。既述のモラルハザード防止措置の有無もそうですが、以前懸念したように、総務省はうわべだけ金融関連のスキームをなぞる程度の知識・知恵で政策立案をしていると思わざるを得ないですねぇ・・・。
■ [WWW]Gapminderが楽しい
econ-economeさん経由ですが、各国のいろいろな変数(一人当たりGDP、平均寿命、CO2排出量、都市人口など)を縦軸・横軸で組み合わせてプロットするものです。思わぬ相関が見つかるなど、なかなか遊びがいがあるページですので、ぜひお試しを。
>総務省が、他方で財政破綻状態の地方公共団体について、財政規律を高めるために債権カットを認める法制を検討しようというのは、支離滅裂である
お見こみの通り。これで、債権カット法制そのものも遠くなりにけりだと考えますが。
ただ、地方団体の債権カット問題は、銀行対策でもあります。夕張に関しても、http://www.pm-forum.org/iseki/archives/2006/06/post_414.html のように(元資料は朝日新聞=消えてる)、指定金や地元の記入機関以外に、メガバンクMが100億円貸しこんでいるわけで、メガバンクにとって100億がとんでもどうってことないですが、制度ですから、地方団体全体なわけで。モラルハザードおこしている地方団体の尻拭いの債権カットはもちろん、事前チェックもしたくない、債権保証を国のほうでひきつづき行え、という銀行団のホンネに総務省がまけた、と考えるのは地方団体ひいきなのでしょうかねえ。
こういうサイトもあります。(こちらが本家なのかも)
http://www.gapminder.org
こちらは、自分でパラメタを指定するのではなく、プレゼンを順に眺めるという形ですが、所得の分布や健康との関係等が提示されています。アフリカがいかに置いてきぼり状態であるかとか、アメリカは医療費使い方間違ってないかとかがよくわかりました。
自分が中学生のころこういうものがあったら、もう少し真面目に社会科を勉強する気になったかもしれません。
TB頂きありがとうございます。中々試すことがない組み合わせが世界各国レベルでトライできるので便利ですね。
>とおりすがりさん
銀行対策というのが、巡り巡って地方公共団体対策になっているのだと思います。というのも、地方債はデフォルトがない前提でBIS規制上リスクウェイトがゼロになっていますが、デフォルトするなら当然ながらゼロのままではあり得ません。ゼロでなくなれば、さぞかし猛烈な「貸し剥し」が生じることでしょう。
>cloudyさん
またgoogleが買収したのでしょうか。ま、おかげで日の目を見るならgoogleさまさまですが。
>econ-economeさん
面白いものを教えていただきありがとうございました。こういうの、嵌る方なんです、私(笑)。
>>bewaadさま
本日は年休ですか。
ご指摘をうけ、ダイエーの再建処理を思いだしました。あまりに規模が大きくなるとかえって救済される。
> 総務大臣の呼びかけに答えて(中略)優先採択するようなことがあれば、各事業の政策目的とは異なる観点で優先順位をつけるということになるわけですから、その運用のあり方としてほめられた話にはなりますまい。
政策のプライオリティは、内閣が決めるのだから、総務大臣の呼びかけで補助金の割り当てが変わるのは「望ましい」というのが庶民感覚なのでは?
厚生大臣が薬害訴訟で勝手に上告を断念すると、喝采を送る国民なのですから。
あの厚生大臣は「あきらめたら試合終了」と安西先生に習わなかったのでしょうか?
> モラルハザードの問題
> 今般の措置は地方公共団体の財政規律を緩める方向に働くことは必定です。
今回の措置は「初めての」破綻自治体である夕張が、「かわいそう」とマスコミにクローズアップされて、政治家や行政が救済を行っているわけです。
典型的なポピュリズムで、薬殺される野犬のことは忘れて、たまたま崖っぷちにいる犬は救済するのと同じ理屈です。
そして、その裏の事情は、庶民は「分かって」やっているわけです。
今回、崖っぷち犬を助けたのは、今まで、そして、これから見捨てる無数の野犬の「供養」であり、「鎮魂」だというのは、国民の合意でしょう。
国民は、今回の夕張救済という自らの偽善に酔いしれ、自己愛に満足しているのです。
今後は、どれほど田舎の自治体が破綻しても、「あたりまえのこと」として、淡々と見捨てられることになります。
各自治体も、それは十分承知でしょう。
ただ、見捨てられようが財政規律が締められることが決して無いのは、全国民にとって「想定内」ですが……
自治体の運営者にとって「明日」の破綻など知ったことではないからです。
(本気で困るのはケツ持ちする総務省の役人ぐらい)