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  • 01/06/2008 (11:59 pm)

    次期日銀総裁についての個人的予測

    Filed under: BOJ ::

    年も改まったところで、今年(少なくとも前半)の日本経済にとって最大の話題、日銀総裁人事について予測を書いてみたいと思います。

     次期総裁の有力候補は、元財務事務次官で日本銀行副総裁の武藤敏郎氏だ。福井総裁を支えてきた実績や安定感を評価する声は多い。

    (略)

     だが、参院第一党の民主党では「国債の利払いを減らすために金利を低く抑えるなど、財政政策に気兼ねする恐れがある」(同党関係者)と、元財務省トップの起用への反発は強い。03年には武藤氏の副総裁起用に対し、官僚OBであることなどを理由に反対した。

     同じ財務省OBでも、国際派の元財務官に対する見方は異なる。早大教授の榊原英資氏やアジア開発銀行総裁の黒田東彦氏については、民主にも「海外の金融当局と円滑に意思疎通できる」と評価する声がある。

     学者では、元日銀審議委員で東大教授の植田和男氏が「政策を評価すればピカイチ」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)と評価されている。デフレ経済の脱却に向け、金融市場に潤沢に資金を供給した量的緩和政策を理論面から支えた。

     同じ東大教授で、経済財政諮問会議の民間議員を務める伊藤隆敏氏の名前も挙がる。日銀に物価安定の目標を課すインフレ目標論者だ。

    (略)

     財界では、三菱東京UFJ銀行会長の三木繁光氏と、野村ホールディングス会長の氏家純一氏が取りざたされる。もっとも、2人とも金融政策へのスタンスは未知数だ。

     2代続けて総裁を出した日銀出身者では、理論派で国際的に知名度もある元副総裁の山口泰氏や、元日本長期信用銀行頭取でセブン銀行社長の安斎隆氏らの名前があがっている。

    朝日「日銀新総裁は誰に 財務省OB・学者・財界人・生え抜き」

     福井総裁の後任候補には、武藤氏のほか三木繁光・三菱東京UFJ銀行会長や氏家純一・野村ホールディングス会長、西室泰三・東京証券取引所グループ会長、伊藤隆敏・東大大学院教授らが取りざたされる。米景気後退の観測や原油価格の急騰など日本経済を取り巻く環境は厳しく、安定感のある武藤氏を起用したいのが政府・与党の本音と見られる。

    (略)

     焦点は、前回(03年)の日銀トップ人事で、官僚OBであることを理由に武藤氏の副総裁起用に反対した民主党の出方だ。若手議員には、元日銀審議委員の植田和男・東大大学院教授や山口泰(ゆたか)・前日銀副総裁を推す声があるほか、「官僚OBなら事務次官より国際金融に通じた財務官経験者の方が適任」との意見も漏れてくる。

    毎日「日銀総裁:3月任期切れ 本命は武藤副総裁 難航なら「空席」も」

    とまあ報道でも多くの名前が取りざたされていますが、間違いなく大本命は武藤副総裁でしょう。というのも、webmasterが知り合いの日銀関係者から聞く限りにおいて、武藤副総裁は日銀プロパー職員からも高い評価を受けていることが非常に大きいです。その意味としては、やはり現在の国会情勢に照らして、民主党が反対しない可能性が低いであろうということとなります。

    ここ数年、金融引締めを進める中で、日銀は何度か政府・与党と対立してきました。となれば、敵の敵は味方ということで、民主党からすれば政府・与党に迎合する者ではなく、これまで同様に政府・与党に時として反旗を翻す者が望ましいのです。日銀プロパー職員も支持する者とは、上記朝日の記事にいう「参院第一党の民主党では『国債の利払いを減らすために金利を低く抑えるなど、財政政策に気兼ねする恐れがある』(同党関係者)と、元財務省トップの起用への反発は強い」ことへのカウンターとなります。

    関連して、日銀プロパー職員(上記記事でいえば、山口前副総裁や安斎セブン銀行社長)の対抗馬がいなくなることも無視できないでしょう。武藤副総裁が「天下り」としてプロパー職員の反発を招いているなら、積極的に担ぎ出すのか消極的に反対しないのかはさておき、日銀プロパー職員を総裁候補にという選択肢も出てきますが、武藤副総裁をプロパー職員が支持している以上、仮に山口前副総裁らに出馬の声がかかったところで、本人が強く固辞するものと考えられます。

    以上から、武藤副総裁が官僚OBだからといって、彼が受け入れられざる場合に他の官僚OBが代わりとなるわけにはいかないこともおわかりいただけるでしょう。財務官経験者である榊原先生や黒田総裁を据えようとしても、日銀プロパーが「天下りだ」として反発すれば、仮に武藤副総裁を官僚OBだからという理由で忌避するなら、彼らもまた同様の理由で忌避されざるを得ません。武藤副総裁が5年かけて築き上げてきた日銀内の基盤を彼らが同様に持っているはずもないのは当然のこと、どころか、榊原先生におかれましてはその方言癖が、二代続けて方言癖のある総裁に悩まされ続けてきた日銀プロパーの神経を刺激するでしょうし、黒田総裁におかれましては非不胎化介入への肯定的評価が日銀プロパーとは相容れないのではないかと。

    学者の先生方については、植田先生は審議委員時代のスキャンダル騒動があるので、福井総裁の村上ファンド問題や本間先生の官舎問題で懲りている与党が推すことはないでしょう。伊藤先生は諮問会議の民間議員として現在政府の中枢にいるわけで、上述のように政府・与党とは一線を画している日銀を欲する民主党が賛成するとは思えません。加えて先生はインフレターゲティング積極論者ですから、日銀プロパーも反発するでしょうし。

    財界の方々は、日銀総裁というハイリスク・ローリターンな職務を引き受けるインセンティヴがないであろうことが最大の障害でしょう。

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    5 Responses to “次期日銀総裁についての個人的予測”

    1. Says:

      面白い見解でした。
      そこで一つ疑問なのですが、日銀プロパーは総裁決定にどのような形でどの程度の影響力を持つのでしょうか?
      法律上では、内閣と国会以外に日銀総裁の意思決定に関わる権限はないと思うのですが、現実にはどのような形で日銀プロパーの影響が及ぶのか教えてくださると助かります。

    2. EURO SELLER Says:

      >榊原先生におかれましてはその方言癖が、二代続けて方言癖のある総裁に悩まされ続けてきた日銀プロパーの神経を刺激するでしょうし、

      やさしく書いておられるが、実は放言癖ですからね。何が何でも榊原先生にはお引取り願いたい。でないと,金融大臣とのダブルトップになってしまふ。

    3. 本石町日記 Says:

      ご無沙汰です。遅くなりましたが、今年もよろしくお願いいたします。
       このエントリー、見逃しておりました。違和感のない内容です。

    4. webmaster Says:

      >壺さん
      まず、総裁は日銀という組織の経営者でもあるわけですから、与党にせよ野党にせよ、候補を選ぶ際にはその人でうまく組織が回るか、ということは必ず考慮に入れます(それ以外の要素をより重く見て、結果的に二の次と判断することはあるにせよ)。そういう観点から候補者の品定めをする以上、いろいろなコネを使って、プロパー職員からどう受け止められそうか、というような下調べはするわけです。

      また、総裁人事が国会議決事項であることから、議案として総裁人事が国会にかけられれば、いわゆる「根回し」というものが行われます。もちろん候補が誰であれ仕事でやるわけですから、内心どうかと思う候補者であっても「お願いします」と言うわけですが、その際にどれほど真摯であるかは国会議員にも案外伝わるものです。

      さらには、多くのプロパー職員が反対するような候補者であるなら、内部告発的な情報が野党に伝わるような事態も考えられます。

      >EURO SELLERさん
      今の福井総裁の方言癖が結構プロパー職員の悩みの種になっている、というのは見逃されがちであるように思います。

      >本石町日記さん
      こちらこそよろしくお願いいたします。

      そのような評価をいただけて光栄です(笑)。

    5. koge Says:

      う〜ん…「方言癖」がなくてかつリフレに親和的な人っているんですかねぇ?
      どんなに慎重で妥当な発言でも、日銀プロパーの価値観に合わなければ「方言」とみなされてしまうでしょうし。むしろ(悪い例かもしれませんが)ごーン氏のような意識改革をしてくれるか、あるいはプロパーを騙してでもリフレを進めてくれるような人が望ましいんですが。

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