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  • 01/11/2008 (11:59 pm)

    ずっと「改革」のターン

    Filed under: economy ::

     言い換えれば、主要な20市場を見た場合、前年比10%を上回る下落をしたのは、東京市場だけという体たらくなのだ。また、東京株式市場の動向をインターネットやBSのデジタルテレビに動画で配信しているストックボイスによると、昨年12月半ばまでの世界49市場の年初からの騰落率は、最下位がアイルランド(ダブリン)市場で、東京市場のパフォーマンスはそれに次いで48位だったという。

     こうした東京市場の低迷の背景には、「成長力の面で、新興国ばかりか、先進国にも続々と抜かれてきた現実がある」(米系証券会社エコノミスト)。内閣府が昨年末に公表した統計は、そのことを端的に表している。それによると、先進国クラブと呼ばれるOECD(経済開発協力機構)加盟国の中で、93年に2位の座にあった日本の1人当たりGDPが、06年には18位まで後退した。さらに言えば、2000年代に入ってからの日本の名目成長力は、平均して 0.3%程度。OECD加盟30ヵ国の平均(5.1%)と比べても低水準で、ダントツの最下位である。

    (略)

     国力を回復し、株式市場の低迷を脱却するために優先すべきは、農業、金融、流通、運輸、教育、医療といった、諸外国に比べて生産性や効率が悪いとされる分野の競争力の強化である。そのために、規制緩和や独立行政法人の民営化といった経済政策が重要なのは明らかだ。こうした分野は、公共事業予算の拡大などと違い、財政再建の足枷がない。

     ところが、福田政権は昨年暮れ、これらの施策でことごとく官僚に迎合してしまい、抜本策を講じられなかった。

     例えば、本コラムでも年末に指摘した独立行政法人改革。101の対象法人を16減らしたと町村長官らは胸を張ったが、実態は中小法人の統合という数合わせに過ぎず、独法が囲い込んでいる業務が民間に移管されたわけでないのは、すでにお伝えした通りである。

    東京市場の独り負けは国の無策が生んだ“官製暴落”(3/4)

     また、やはり、政府の規制改革会議(議長:草刈隆郎日本郵船会長)が年末に第2次答申をまとめた規制緩和でも、保険診療と保険外診療を併用する混合診療の全面解禁が見送られるなど、官僚の根強い抵抗にあって抜本策が実現しなかった。この責任も、福田康夫首相らの行政府の長としての指導力不足にあることは明らかなのである。

    東京市場の独り負けは国の無策が生んだ“官製暴落”(4/4)

    日本の長期低迷はTFP低下によるとの仮説に沿った論旨ですが、ミクロ的な資源配分が不適切であることへの対処ではなく、マクロの成長性改善としても有効であるのかを検証せずにこう言われましても、と反論せざるを得ません。引用文ではあたかも4.8%ポイントの差がTFPの差ないし実質GDP成長率の差に起因するように書かれていますが、対するにwebmasterはむしろデフレの問題であろうと考えるわけです。そのあたり、筆者が検証しないというのでしたらwebmasterが検証してみましょう。

    #TFPなり少子高齢化なりに長期低迷の原因を見出す分析であっても、それが4.8%ポイントにも上るというものはないような気もしますが。

    とりあえず、名目ではなく実質成長率で見てみれば、ソースとして国民経済統計サイトのデータを用いたため、OECD全加盟国ではなくデータがないスロヴァキアと2000・2001年の2年間しかデータがないルクセンブルクを除く28ヶ国ベースとなりますが、2000年から2005年までにおいては28ヶ国平均2.84%に対して日本は1.87%となりずいぶんと差が小さくなります。順位についても第20位で「ダントツの最下位」ではなくなります(日本より低いのは、イタリア、オーストリア、オランダ、スイス、デンマーク、ドイツ、ベルギー、ポルトガル。ちなみに最下位はイタリアの1.12%です)。

    #引用中の「平均」が何かは定かでありませんが、上記平均は各国については幾何平均、28ヶ国平均はその算術平均を用いています。仮に引用において各国について算術平均が用いられていたとしても、たとえば日本については算術平均が1.88%ですから、結果的には大差ないと思います。

    加えて、日本のGDPデフレータ(上記引用とwebmasterの計算の差分を用いれば約▲1.6%)がOECD平均のそれ(日本と同様に計算すれば2.3%)と同じであったと仮定して計算してみれば、日本の2000年代の平均名目成長率は4.2%程度であったということとなります。「規制緩和や独立行政法人の民営化といった経済政策」よりも、まずはデフレを脱却することが名目成長率の改善にとって「重要なのは明らか」でしょう。

    では、何ゆえにGDPデフレータが低いのでしょうか。当サイトのスタンスとしては当然日銀の金融政策が悪いからだということとなりますが、この国際比較を違った角度から見ることで、若干の裏づけをしてみたいと思います。先に日本よりも実質成長率が低かった国を8ヶ国掲げましたが、スイスとデンマーク以外の6ヶ国にはある共通点があります。それは何でしょうか? 加えて、日本のひとつ上の第19位フランスもそれに共通しているのですが、どうでしょうか?

    答えは、通貨がユーロである、ということです。デンマークもERM IIに組み込まれほぼユーロペッグなので同じだと考えてしまえば、なんとワースト10ヶ国中8ヶ国がユーロ圏諸国で占められているのです(ちなみに他のユーロ圏諸国については、アイルランドが第1位、ギリシアが第5位、スペインが第8位、フィンランドが第14位で、キプロス、マルタ、ルクセンブルク、スロヴェニアは統計に含まれていません)。

    これはユーロという統一通貨ゆえに、各国の実情に適していない金融政策が共通に適用されてしまっていることが寄与していることを窺わせます。サンプルが少なすぎるので眉唾前提で見ていただきたくはありますが、28ヶ国中のヨーロッパ諸国について、ユーロ圏諸国11ヶ国は平均2.46%・標準偏差1.52%ポイントである一方、非ユーロ圏諸国9ヶ国は平均2.86%・標準偏差1.02%ポイントであり、ユーロ圏諸国の方が平均が低くばらつきが大きいということとなります。デンマークをユーロ圏諸国としてカウントすればそれぞれ平均2.39%・標準偏差1.47%ポイントに対して平均3.01%・標準偏差0.99%ポイントとなり、その傾向はさらに際立ちます。

    こうした検証もなく、十年一日のごとく改革が足りないから成長できない、官僚が抵抗するから改革が実現できないとの安直な主張こそ、「改革」していただきたいと思うのはwebmasterだけでしょうか? いくら改革してもマクロ的な効果が出ないのは(改革にはそうした効果をもたらす機能がないからではないかと検証することもなく)改革が足らないからだ、とずっと「改革」のターンが続くのは勘弁していただきたいものです。

    最近では例の埋蔵金話のせいで、こうした主張がますます力を得ているようにwebmasterには見えるのですが、ここでも当然のように触れられています。

     加えて、有耶無耶に終わろうとしている埋蔵金論議(政府の特別会計の膨大な剰余金問題)も重要だ。本稿の執筆にあたって、改めて05年4月に経済財政諮問会議に提出された「各特別会計の改革案」を確認したところ、財務省所管の財政融資資金特別会計と外国為替資金特別会計の2つだけで、資産総額から負債総額を差し引いた剰余金が05年度末に34兆円弱も存在した。当時の試算では、これが09年度末には、50兆6000億円近くまで膨らむという。財政融資資金特別会計にも、外国為替資金特別会計にも、それなりのリスクがあり、一定の剰余金が必要ではあろうが、これほど巨額の剰余金が必要とは到底考えられない。

     ところが、政府・与党がまとめた来年度予算の政府案では、こうした埋蔵金が有効に活用されたとは言えない。その結果、小泉・安倍政権時代と比べても消極的な国債発行の圧縮策しか盛り込まれなかった。

     それどころか、政府・与党は、今年の総選挙を済ませたら、来年度に消費税を大増税しようという意図を露骨に見せている。安易な消費税増税は、格差に喘ぎ、低迷する個人消費を一段と冷え込ませ、瀕死の成長力をさらに損ねる施策なのに、その方向に舵を切ろうとしているのだ。

     30兆円、50兆円といった埋蔵金があれば、消費税増税どころか、石油税や法人税の引き下げといった景気にプラスで、国際競争力の向上にも役立つ諸施策がふんだんに可能なのに、政府・与党にはそうした政策を立案し、実行する力がない。

    東京市場の独り負けは国の無策が生んだ“官製暴落”(4/4)

    増税派にもまったく賛成はできませんが、埋蔵金が消費税増税の代替策以上のものであるという主張にもまったく賛成できません。仮に埋蔵金が50兆円だったとして、それを恒久減税の財源にする場合、最近の国債利率を1.5%として割引率に用いたときに毎年どれだけのキャッシュフローが50兆円の現在価値となるかを計算すれば、7,500億円となります。消費税増税派が増税が必要である理由のひとつとして持ち出す、基礎年金国庫負担の1/3から1/2への引上げには2兆円以上の財源が必要だとの主張の反論にはまったくなっていません‐税率の上げ幅の議論にはなり得ても、増税の必要性をかえって認めてしまうだけでしょう。

    #ちなみに割引率が5%だとキャッシュフローは年2.5兆円となりほぼ見合うわけですが、国債金利≒名目成長率だとすれば、それだけの割引率になるほどの名目成長を達成できていれば、そもそも増税論自体が説得力をなくしていることでしょう。

    そもそも埋蔵金を問題視することそのものにwebmasterは懐疑的ですが(真の財政事情=純債務で財政を見る場合には、まったく意味のない概念ですから)、それを受け入れたとしてもこの有様です。フローとストックの区別ぐらいつけて議論してほしいもので・・・。

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