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外桜田書院講義録

巻の一「門を敲きし者へ」

国家公務員採用I種試験の申し込みが締め切られ、今年の試験を受ける官僚志望者は最後の追い込みに励んでいることだろう。 webmasterは人事担当者ではなく、採用に関しては単なる一個人ではあるので信頼できるかどうかは定かではないが(というか、人事担当者がこんなことをすれば大問題だが)、当サイトをご覧の官僚志望者へ日頃のご愛顧に対する感謝の意を込めて、いわゆるキャリア官僚(I種試験合格・本省採用)となるためのノウハウをまとめてみたいと思う。

しょっぱなから救いのない話だが、一次試験まで後1ヶ月を切った段階で試験勉強にあくせくしているようでは、正直言って採用にまで至るのは難しい(今まで全く試験勉強をせずにいて、これから始めるような人は別だが)。 それはなぜかというと、当然ながら役所といえど何らかの魅力を持った人間を採用したいと考えるわけだが、「一生懸命試験勉強に励んでようやく合格しました。 私の長所は試験勉強に盲目的に邁進できることです」という人間に魅力を感じることはないからだ。

実は、I種試験はそれほど難しい試験ではない(少なくともwebmaster自身が受けた法律区分は)、ということは多くの人が賛同してくれることだろう。 I種・法律区分と司法試験を比べれば、お話にならないぐらい司法試験の方が難しい。 司法試験であれば、確かに相当程度試験勉強に打ち込む必要があろう。 しかし、I種試験がそれほどの難易度ではないということは、もちろん法曹に比べて要求される民法等に関する知識水準が低いということもあるが、度を超えて試験勉強に汲々として欲しくないということでもある。

官僚として必要とされる法律知識、例えば所掌する法令に関する知識や条文作成技術は、どのみち職場で身をもって習得してもらうよりほかなく、学生が事前に身につけていることなど期待していない(法学部でその手の講義があるはずもないし)。 I種の法律試験は、その手の知識・スキルを確認するためのものではないのだ。

ではなんのための試験か。 webmasterは、それはポテンシャルの確認だと思う。 I種試験を、それほど本気にならなくても合格できる能力があるかどうか、それを見ているのだと。 あくまで足切りのためのものなのだ。

だから、合格できる程度の位置(法律区分でいえばだいたい毎年8,000人程度が受験しているが、合格者数は今年度は昨年度並みらしいので、400人台といったところで、だから合格する可能性があるのは上位1,000人ぐらいだろう)にいればそれでよい(今年は違うようだが、近年は一次試験の合格発表前から学生の絞り込みが進んでいたようで、つまりは試験合格順位など大した意味はないということだ)。

では、この時期に何をすべきか。 webmasterのおすすめは3つある。

1つ目は、自分の売りを磨くこと。 研究でもサークルでも何でもいいのだが、これなら自分が嚢中の錐となれると思うものに打ち込むことだ。 あと2ヶ月ほどで始まる官庁訪問の際には、いかに自分が魅力的な人間であるかをアピールしなければならない。 プレゼンスキルを考えることも必要だが、それは短期間でなんとかなるもの。 しかし、実際に売りになる何かを高めるのはそれなりに時間がかかる。 それを思えば、残された期間がたった2ヶ月しかないことを踏まえて、とことんやり尽くして欲しい。

2つ目は、本当に自分が官僚になりたいのかどうかを考えること。 官僚という職業、役所という職場は、けっこう癖がある。 一見良家の子女で雅びた雰囲気があるが、一皮むけばとんだじゃじゃ馬。 ルックスや雰囲気にだまされて口説いてみたはいいけど、つきあいきれないということは大いにあり得る。 よく安定しているなどというが、このご時世、自分のいる役所が10年後どうなっているかも不確定であり、まして今の学生が定年を迎える頃にどうなっているかなどわかったものではない。 稼ぎは、I種に合格できるぐらいなら外資の金融やコンサルにいった方がはるかにいい。 歴史と伝統があるといっても、その分いろんなしがらみや分からず屋の上司が多いということ。 合コンやったってもてないし。 それでもいいというほど盲目的に役所に恋をして、それが一緒になった(=就職した)後も続くという確信がなければ、世の中のもっといいパートナーを探した方がよい。

3つ目は、今まだ自分が合格圏内にはいないと思うなら、しっかり勉強すること。 とにもかくにも、官僚になろうとするなら、合格しないことには何ともならない。 今の自分には十分アピールする点がある。 官僚になりたいという意志にも問題はない。 ただあとは合格できるかどうか・・・というなら、あとたった3週間あまり。 本当に情報処理能力があり、役所での無味乾燥な仕事に耐えられるというそんな人間なら、あの程度の試験は3週間(ゴールデンウィークだってあるし)でなんとでもなる。

webmaster自身がどんな試験対策をしたかなどほとんど忘れたが、次回では試験勉強のコツなど、覚えている範囲でお伝えしよう。

(2003-04-13記)

巻の二「会試に臨まんとする者へ(上)」

今回の題目は具体的な試験対策、それも択一式の一次試験についてだ。 「過去問を繰り返し解いて、パターンを暗記せよ」一次試験対策はこれに尽きる。

具体的には、まず、できるだけ多くの過去問を入手する(早稲田経営出版実務教育出版から販売されている)。 次に、1回全体を通してひたすら解く。 ここで大切なのは、正解することは全く重要ではないということ。 目的は、暗記する問題を選び出すことである。 従って、わからない問題は解かない(運で正解して、わかった気になっては却って有害)。 考え込んでしまった問題も、あえて解かない方がいいだろう。

そして、間違えた問題と、解かなかった(解けなかった)問題を選び出し、その解答に一応目を通す。 ここで解答をしっかり覚えようとしてはいけない。 わかっていないものは、一回読んだぐらいでは覚えられないものだからだ。 次はそうして選び出した問題だけを解き、また間違えたり解けなかった問題については解答に目を通す。 これを何度か繰り返したら、もう一度全体を通して解いてみる。 ここで再度、反射的に答えられなかった問題を選び出し、またそれらの問題だけを何回もやってみる。 以上を2、3回繰り返せば、ほとんどの問題は反射的に答えられるようになっているだろう。

とにかくコツは、繰り返し繰り返し問題を解くことで、論点メモだのテーマごとのまとめだのを作ると行ったことは一切しないこと。 相手はたかが択一試験。 本当の頭の良さが試されるわけでもなければ、専門知識の理解度を測られるわけでもない。 必要とされる知識だけを、効率よく身につけるという情報処理のスキルが問われているものと考えるべきなのだ。

ちなみに、以上は専門試験についての話。 教養試験については、一般知能は専門の勉強の合間に、気分転換のつもりでやって慣れるぐらいがちょうどよいだろう。

一般知識は、短期間ではどうしようもない。 3年生以下の人たちは、バイトで高校生の家庭教師でもやってその手の知識をリフレッシュしておくのが一石二鳥だが、試験まであと1ヶ月を切った4年生は、専門試験の勉強に差し障りのない範囲で好きに勉強するしかない。 くれぐれも、短期集中での試験対策としては、専門試験に時間を割り当てる方が圧倒的に効率的だということをわすれずに。

(2003-04-20記)

巻の三「会試に臨まんとする者へ(下)」

前回に引き続いての試験対策、今回は論述試験(念のため断るが、対象はやはり法学限定)をどう乗り切るかについてだ。 といっても、何か特別なことをしなければパスできないというレベルのものではないという点では、択一試験と大差がない。 基本的に通説・判例をおさえておけばよく、おそらくほとんどの法学部の期末試験の方が難しいだろう。

従って、試験対策としては、効率よく学部の講義を思い出し(民法を4年生になってもやっているというケースは限られるだろうし)、頭に焼き付けるかがポイント。 方法論は択一試験対策と同じで、一度に根詰めて覚えようとするのではなく、何度も繰り返すうちに覚えていくということとなる。

だからといって基本書を紐解いてはいけない。 あくまで目標は通説・判例を押さえることだからだ。 情報量が多すぎ、これを繰り返し読むのでは効率が悪くなる。

ここで相手とすべきなのは、法学部生なら必ず持っているであろうアイテム、判例百選シリーズだ。 判例百選は、読んだことのある人間であれば共通して思うことだろうが、デザイン的に読みづらい上に中身も(公務員試験対策の観点からは)無駄が多く、何度も繰り返し読む気になれる代物ではない。 というわけで、最初に行うべきことは、繰り返し読むことを目的とした要約版の作成となる(百選に未掲載の最新判例も、準ずる形で判例評釈の要約を作る)。

この要約版、目的に照らせば、次のようなものでなければならない。

完成したら、後はひたすら読むだけ。

「百選」といっても掲載判例が100以上あるのはご案内の通りであり、憲法I・II、民法I・II、行政法I・IIの6冊で合計7〜800となるだろうが、1判例を1分で読み(逆に言えば、その程度にまで要約せよということ)、1日1時間読む時間を確保するとすれば、2週間で1回通し読みが可能なはずだ。 2回目以降は効率も上がってくるだろうから、通し読みに必要な時間はどんどん短縮していく。 理想を言えば、試験直前には1、2時間で全部読めるようになっていれば言うことなし。

実はwebmaster自身は要約を作ったところで飽きてしまったので、それほど繰り返し読んだりはしなかったので、それほど偉そうに薦められる立場にはないのだが、しっくりくる学習法が見つからず悩んでいる方にとっては、一度試してみて損はない方法であるはずだ。

(2003-04-27記)

巻の四「進士たらんとする者へ(一)」

先日、一次試験の合格発表があり、公務員試験も佳境に入ってきた。 先刻周知のこととは思うが、公務員試験はあくまで一種の資格試験に過ぎず、最終的に官僚としての人生を歩くこととなるかどうかを決めるのは、官庁訪問を通過しなければならない。

官庁訪問については、例えば2ちゃんねるの公務員試験板を見ても、玉石混淆の情報が乱れ飛んでいるので、どうしたらよいかとまどう向きもあろう。 今回は、落ち着いて官庁訪問に備えることができるよう、まずわきまえておくべきことごとを並べることとする。

(2003-05-31記)

巻の五「進士たらんとする者へ(二)」

最初に一つお詫びを。 先週触れたOpenJaneとは2ちゃんねる専用ブラウザの一つ。 リンクを張り忘れたので、ログを読みたくてもわけわからんという人がいたら失礼であった。

さて、官庁訪問で最初の課題となるのは自己アピールである。 まずは自分という人間に興味を持たせなければ始まらない。

その前段階として、どのような人間であれば評価されるかを考えると、端的に言えば頭の良い人間である。 そして、それと同じぐらい重視されるのが、コミュニケーション能力である。 それぞれ、順に説明してみよう。

まず頭の良さであるが、どのようなタイプの頭の良さが求められるかといえば、官僚の仕事は以前「官僚道の歩き方」でも書いたようにある種の情報処理であり、その過程で付加価値を十分つけることができるかどうかが評価の分かれ目だ。 ここで重要なのが時間と価値のバランス。 短期間で処理すべき案件については、使うことが許される時間から逆算して処理のレベルを設定しなければならないし、それなりの時間がもらえる案件については、ちょっとやそっとのツッコミでは倒れないだけの内容が求められる。

具体例を出すと、国会議員から説明を求められた場合が時間優先の典型。 急いで来いといわれれば何はさておき行くことが重要であり、説明がきちんとできるかどうかは二の次。 もちろん説明に行く人間は担当者であるからして、まったく何も説明できないというのは論外だが、個別事例についての問い合わせなど、急には詳細がわからないこともままある。 そうした場合には、とりあえず関係しそうな資料を斜め読みして枠組みを整理して対応し、わからないことはわからないと引き取って再度説明するというのがベター。

他方、時間をかけてじっくり取り組む典型は法律案の作成。 法律案の作成担当者は、自分が書く条文については、それこそ一語一語についてそれがなぜそのような言葉を使い、どのような意味を持ち、他法令との関係がどうであるか等々についてわかっていなければならない。 それも、独りよがりであっては意味がなく、その分野での専門の学者から批判されたとしても、最悪でも立場の違いで説明可能なレベルで反論する必要があり、論破されるようなことがあってはならない。

次にコミュニケーション能力であるが、官僚はあくまで役所という組織で勝負する人種であるので、組織内でうまくやっていくことと、組織を代表して外部の人間とうまくやっていくことの両立が求められる。 自分が正しいことであっても、相手のメンツをつぶして感情的に反対されるようなことになってはならないし、馬鹿な上司・使えない部下と思っても、それが伝わって嫌がらせを受けたり、サボタージュされるようでは仕事が回らなくなる。 論理で勝負したり、浪花節で訴えたり、政治家や幹部の威を借りたり(相手が折れる理由を用意するということ)と、様々な手練手管が使えることが望ましい。

以上のような能力があると訴えるのに適した手法は3つある。

1つは、自分の専門分野の説明だ。 例えば法学部出身の官僚であっても、大学を離れれば学界の最先端には疎くなるので(特に大学でメジャーな民法や刑法などは、法務省の担当以外は条文を読む機会すらほとんどない)、学生の専門分野については素人同然と考えてもらって差し支えない。 そうした人間を相手に、自分の専門分野をどれだけわかりやすく説明し、素人からの質問に、それがピントはずれのものであっても誠実に対応するというのは、自分の能力をどれだけ言葉で語るよりも説得力のあるアピールとなる。

専門分野とは、何も学問である必要はない。 サークル活動でも、国内外の長期旅行でも、とにかく人とは違う何かについて、それをわかりやすく、根気強く説明して、自分が打ち込んだ何かの魅力と、それを通じて自分が得たことを伝えることができれば、それを聞いている目の前の官僚も高い評価を与えることになるだろう。

あとの2つは次回だ。

(2003-06-08記)

巻の六「進士たらんとする者へ(三)」

残る2つのうち1つは、志望動機のアピールだ。

社会人としてどの道を選ぶかというのは、学生結婚をしていない限り、多くの人にとって20年強の人生では最大の選択のはず。 どのようなことを考え、どれだけ情報をきちんと集めたかということが、志望動機には如実に表れる。

よくある志望動機として、「金儲けだけを考えるのではなく、社会のために働きたいから公務員になりたいと思います」というものがあり、これを評価する官僚もいるかもしれないが、webmasterとしてはこうした人間には官僚になってほしいとは思わない。 当サイトの主張からしてwebmaster木村剛には批判的なのは一目瞭然と思うが、彼が高く評価されてしかるべきである唯一の点は、日銀の就職面接において、金儲けに否定的な意見をいう周りの学生に憤慨し、資本主義社会である日本で真に公益を達成するのは私企業の利潤追求であると言い切ったことだ(ウェブ上でソースが見つからないので、細部は不正確かと思うが)。

高い給料が欲しいなら、外資系コンサルをはじめ、国Iに合格するほどの人間なら他にいくらでもいい就職先がある。 社会のために働きたいのなら、見えざる手の一つとして民間企業で利潤追求に励むべきだ。 天下りなどでおいしい思いをしたいというのなら、そもそも官僚不適格。 労働条件は劣悪だし、政治家・メディアからは、認められる100倍はけなされる。

そんな官僚になぜなりたいかをきちんと説明し、それに対しての質問に当意即妙に答えることができれば、その学生の印象は強いものとなろう。

最後の、そして最も難しいものは、訪問先の役所の批判だ。

どんな政策であってもしょせんは人間が考えたものであり、欠点のないものなどあり得ない。 担当者は政策のことを知っているだけに、何がその欠点かはよく分かっている。 上記のように、日頃政治家・メディアから批判を多く受け、かつ、そのほとんどが事実誤認や言いがかりだったりするだけに、担当者は的確な批判を受けると、思わず「こいつはこの政策のことをよくわかっているのだな」と思ってしまうもの。

とはいってもそこは担当者、自分でも弱いと思っている点であっても、そこを指摘された場合にどう対応すべきかはわかっており、学生が的を射た批判をしても反論してくる。 従って、最終的には担当者に論破されるのは当然(逆に、学生=素人を論破できないような官僚は大いに軽蔑の上、完膚無きまでに折伏してかまわない)なのだが、論破のされ方によりさらに好印象を与えることが可能だ。

具体的には、一度や二度は再反論・再々反論を試みつつ、最終的には適当なところで白旗をあげること。 何も反論をしないというのでは、的を射た批判は偶然だと思われかねないので、そうではなくきちんと考えた上での批判だということを示すためには、5分や10分程度は対等な議論をする必要がある。 その上で、自分は間違っていることは間違っていると認めるだけの判断力があることを明らかにするため、きちんと負けを認めて引き下がる(論戦は喧嘩と違って勝敗が見た目ではわからないので、自分が負けていることがわからない相手ほどたちが悪いものはない)。

これができれば、少なくとも面接の相手の官僚が優秀であれば、高い評価を与えること間違いない。

(2003-06-15記)

上記の木村剛の発言については、次のようなものであるとの指摘をいただいたので、訂正させてもらう。

(日銀の福井人事局次長(当時。 現総裁)の「日本銀行を志望するということは、社会のために働きたいということだね。 金儲けがいやだから公のために働きたいんだよね」という質問に答えて、)

「金儲けのために働いている人の便益を受けているにもかかわらず、金儲けを卑下するようなことは言うべきではない」 (「エコノミスト」2002年4月2日号p51、「人間探検」第一回目)

(2003-06-22記)

木村剛の発言については、先週発売のSPAで次のような記述があったので、追記しておく。 ここまでくると、何が本当なのかよくわからなくなってくる・・・が、どれでも概ね意図するところは同じなので、この点についての木村への評価は不変だ。

(日銀の福井人事部次長(当時。 現総裁)の「金儲けっていうのは汚いものだから、私は国民のために働きたいと言って、日銀を志望する人が多いんだけど、君もそうだよね?」という質問に答えて、)

「金儲けは汚いなんて言うヤツは、中国へ行って人民服を着てればいい」 (「SPA」2003年7月1日号p183、「エッジな人々」292)

(2003-06-29記)

巻の七「進士たらんとする者へ(四)」

いよいよ業務説明会が開始となり、職場の中でも初々しい学生を見かけるようになった。 実際に官僚と会話をしてみて、思ったほどではないと楽観している人もいれば、良い感触が得られなかったと悲観している人もいることだろう。

今は連続訪問禁止期間中だけに、どの省庁であれまだ1回しか訪問していないはずで、もし失敗したとしても十分挽回可能。 今回は、そんな人のためのテクニックを一つ。

採用されるかどうかは、最終的には頭の良さや体力など、官僚に向いているかどうかで決まる話ではある。 しかし、こいつは絶対採用!となるほど頭抜けた存在はそれほどはいないのもまた事実である一方、将来の人事ローテーションなどを考えれば毎年一定の人数を採用するのもまた事実。 その間について、訪問してくれた学生の誰を採用すべきかは、人事担当者であれば必ず頭を悩ます問題だ(ちなみに、先の「絶対採用」組については、他省庁に採られるのではないかと、それはそれでまた悩みの種がある)。 では、そういったボーダーラインの争いで泣かないためにはどうすべきか。

官庁訪問と言っても、人と会って話をして気に入られるべしという点では、例えば合コンや告白と一緒。 先に言ったとおり、リザーブとして採用される人間がいる以上、No.1にならなくてもいいどころか、only oneにならなくてもいいのだから、この場合、勝ちを狙わずとも負けない闘いをすればよいということだ。

いきなり初対面の人間と話をさせられたとき、どうなったらいやな思いをしたり、困ったりするのかがわかれば、それを避ければよい。 人によって何がいやかはいろいろあろうが、相手や場を問わず、言葉に詰まって気まずい沈黙に包まれるシチュエーションが好きだという人はそういないだろう。 従って、場つなぎとなる材料を用意しておくことが望ましい。

省庁がどこであれ、相手が誰であれ、使いやすい場つなぎは何かといえば、質問をすること。

そのネタとしては、まず、場つなぎという意図がなくとも聞いておくべきことはきちんと聞いておくべきだ。 例えば、どの程度忙しいのか、どのように人事異動をしていくのか、給料はどれほどもらえるのか(特に残業代)、仕事のやり方は具体的にどのようなものなのか、等々。 人事担当部局で一通りのことは教えてもらえるだろうが、この手のことは、実態を知るためには聞きすぎるということはない。 できるだけ多くの人に同じことを聞いておくべきだろう。 ちなみに、違う省庁の人間にそれぞれ聞いてみると、メディアに出てくるイメージとは違う側面がいろいろとわかって面白いはずだ。

では、場つなぎとして聞くべきことは何か。 ある意味時間稼ぎなのだから、できるだけ相手の官僚が多くのことをしゃべりたくなるテーマであるべき。 役人人生で一番面白かった仕事は何か、逆に一番苦しかった仕事は何か。 今まで仕えた上司で一番尊敬している人は誰か。 その手の話題を嫌う人もいるので人を見る目に自信がある人向けだが、趣味や特技などについて聞いてみるのもいいだろう。

いずれにしても、大切なのは話を発展させること。 質問に対して答えてもらいました、で終わってしまってはもったいない。 相手の答えの中にとっかかりを見つけて、きちんと自分の言葉で議論できるテーマへ誘導していくことが大切だ。 官庁訪問は、相手省庁に自分を採用する気にさせる勝負なのだから、機会を見つけては、「自分は採用するに足る人間です」とアピールするプレゼンの場だとわきまえておくべきなのだ。

(2003-06-22記)

巻の八「進士たらんとする者へ(五)」

先日、国Iの最終合格者が発表され、いよいよ官庁訪問も本番。 今週には内定が出てくることとなるだろう。

もしあなたが幸いにして内定を勝ち得たらどうすべきか。 民間からも内定をもらっているだろうが、民間企業と霞が関のどちらを選ぶべきか。 大学院への進学を選択肢に入れている人もいるかもしれないが、そのどちらがいいのか。 さらに幸いにして複数の省庁から内定をもらったら、どの省庁を選ぶべきか。

今回はそうした観点から比較すべき点を紹介する。

(2003-06-29記)

巻の九「講義を修めし者へ」

内定を獲得した人、おめでとう。 あなたにとしては願いが叶い、また、あなたを選んだ省庁としても、あなたという人材に職場として認められ、互いに幸いであることこの上ない。 その幸いに、この一連のテキストが役立ったとすれば、それはwebmasterにとっての幸いでもある。

ここで、官僚の先輩としてえらそうに官僚たる心構えなどを説くのは簡単だが、それはすまい。 100人の官僚がいれば100の官僚の理想像があり、結局は霞が関に来て以後、官僚としてどう生きるべきかは、あなた自身が見出していくものだからだ。

どんな人間であっても、生きることができるのは今しかなく、未来は過去の延長にしか存在しない。 学生(人によっては社会人)である今の暮らしの中でできることを、今のうちに十分やっておいてほしいと思う。 そして、来年4月に霞が関の住人となってみたときに、違和感を感じられるような人間であってほしいと思う。

ここでwebmasterがなんと言おうと、今の霞が関が多くの課題を抱えていることは否定しがたい。 新人が感じる違和感の多くは他愛もないものではあるが、そうした違和感の中にしか、課題の解答は存在しないからだ。 どんな人間であれ、霞が関に入ってしまえば、多かれ少なかれ霞が関の流儀には染まってしまう。 そんな世界に少しでも多くの多様性をもたらすことが、今のあなたに求められる最大のことだと考えてほしい。

そして内定を獲得できなかった人、残念でした。 しかし、日本はあくまで資本主義社会であり、その主役は民間企業だ。 また、政策の執行に軸足を置きがちな行政府に、中長期的な方向性を問いただすことができる一番の存在は、学界の住人である。 その他の進路を含め、それぞれが社会において不可欠の役割を果たしており、霞が関はその中の一つに過ぎない。

たまたま霞が関の人事担当との相性が悪かったぐらいで落ち込むことはない。 それぞれが選んだ分野で活躍し、あなたを採用しなかった人事担当を悔しがらせるような人材になってほしい。 霞が関とは、しょせん外部の各主体が順調であることでしか、自らの成功を証明できない存在であり、古今東西、官僚だけが継続的に栄えた国家などないからだ。

さぞかし腹立たしく、なんでそんな形で霞が関に貢献しなければと思うかもしれないが、我々はかよわい、あまりいじめるな(by 田村玲子@寄生獣ということ。 いずれにせよ、官僚という職業を志望してくれたことは大変うれしい。 できれば今後も同情心をもってくれるとなおさらありがたい(笑)。

以上で講義は終了だ。 ご清聴を多謝。

(2003-07-06記)

bewaad<webmaster@bewaad.com>

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