bewaad institute@kasumigaseki

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  • 08/25/2007 (10:53 pm)

    検証「いつか来た道?」

    Filed under: economy, BOJ ::

    #8/25の夜に公開したはずなのに・・・。

    一昨日のエントリのwebmasterの予想が的確だったのか的はずれだったのか、金融政策決定会合後の総裁記者会見要旨で検証してみます。

    マクロ経済環境の認識

    webmasterの予想

     多くの委員の金融経済情勢に関する認識は、(1)景気の現状は、企業収益が改善する中で、設備投資の増加が続くなど、緩やかに回復している、(2)引き続き良好な金融環境が維持されている、(3)先行き、海外経済等の外部環境に大きな変化がなければ、今後も設備投資を中心に緩やかな回復が続く可能性が高い、(4)需要の弱さに由来する潜在的な物価低下圧力は大きく後退している、といったものであった。

     以上の認識を踏まえ、わが国経済は「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢」に至りつつあるとの認識が概ね共有された。

    総裁記者会見要旨

    実体経済は、前回の説明とあまり変わらないと思いますが、世界経済は地域的な拡がりを持ちながら拡大を続けており、そのもとで日本経済についてみますと、日本から海外への輸出は増加を続けているという状況です。国内の民間需要も増加しております。高水準の企業収益あるいは業況感が引き続き良好という中で、設備投資は引き続き増加しています。雇用・所得面では、失業率が3.7%に低下するなど、労働需給を反映する諸指標が引き締まり傾向を続けており、その中で雇用者数が増えています。一人当たり賃金はやや伸び悩んでいるという状況は変わらず、この点は注目しておりますが、雇用者数は増え、雇用者所得は緩やかに増加を続けています。それが背景となって、個人消費はあまりめざましい展開ではありませんが、引き続き底堅く推移しているという状況です。

    (略)

    物価面についても前回説明したこととあまり変わっていません。国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、3か月前比でみて上昇しています。先行きにつきましても、目先、上昇を続けるとみています。消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比は、目先、ゼロ%近傍で推移する可能性が引き続き高い状況ですが、より長い目でみますと、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想しています。

    検証

    企業収益や設備投資の動向を中心に据えた強気の姿勢は的中といってよいでしょう。需要が回復基調であり、そのトレンドの外挿によるものか、今後の動向として物価下落圧力は解消されていくとの見通しも、これまた的中といってよいでしょう。

    サブプライム問題の認識

    webmasterの予想

     ただ、多くの委員から、金融政策引締めのタイミングについては、いわゆる「サブプライム問題」が市場心理などに与える影響について、もう少し見極めてから判断しても良いのではないかという意見が出された。また、このうち何人かの委員からは、この問題の市場心理への影響とあわせて、企業マインドや消費者センチメントへの悪影響の可能性も指摘された。ある委員は、個別企業の問題が重要ということではないが、この問題が象徴している「特定セクター」の構造問題が世間で強く意識されている現状では、本日金融を引締めした場合に、企業家心理にマイナスのインパクトを与えてしまう惧れもないわけではないと述べ、今日のところは、引締めを見合わせるのが適当である、との意見を示した。別の委員も、取り巻く経済諸情勢、とりわけ、いわゆる「サブプライム問題」の経済界、金融界に対する心理的な影響を考えると、判断のタイミングとしては決めがたい、と述べた。

    総裁会見要旨

    ただ、今回の金融市場の実体経済、とくに米国経済への影響については、いくつかのルートでどのように影響が出てくるかを注視していかなければならないと思っています。それは、住宅金融を通じて住宅投資に与える影響、これが一番中心的な影響でありますが、クレジット市場の機能低下が企業金融に与える影響はどうか、今のところサブプライム問題、あるいはクレジット市場の機能の停滞が、企業金融全般に強い影響を与え始めているという兆候はありませんが、市場はどこかでつながっているわけですので、クレジット市場の機能低下が企業金融に与える影響が全くないのかどうか、注目していく必要があります。それから市場の動揺がもし長引くという場合には、株価の下落等を通じた家計のマインド、あるいは企業のマインド、といったマインド面への影響などが考えられるわけです。株価に反応しやすいミシガンの消費者コンフィデンス指数が既に少し下がっているということはご承知だと思います。そうしたマインド面の影響が考えられますので、注視していかなくてはならないと思っています。つい先日の米国のFOMCの声明でも、今後の米国経済の成長を抑制する可能性があるとしておりますが、今申し上げた点を私どもは注視していくべきであろうと思っています。

    検証

    影響を見守るべしというのは変わりませんが、webmasterの予想に比べると、実体経済への影響により配意しているといえるのではないでしょうか。マインドに触れているという点では同じですが、webmasterの予想(すなわち、速水前総裁時代のゼロ金利解除に当たっての判断)においては、単に引締めのタイミングを遅らせるべきというスタンスであったように思われます。他方で今回は、マインドの影響によって実体経済の悪化があり得て、その際には引締めの単なる延期ではなく、取りやめもあるのかな、というように見えるのですが・・・。

    つまりは、世間的な見方とも同じ話ではありますが、来月もまた利上げはなしかな、と。あるいは、「また」ではなく「まだ」?

    08/23/2007 (12:32 am)

    いつか来た道?

    Filed under: economy, BOJ ::

    本日、日銀の金融政策決定会合において金融政策の方向性が示されますが、おそらく利上げは見送られることとなるでしょう。その理由は、次のようなものではないかとwebmasterは思います。

     多くの委員の金融経済情勢に関する認識は、(1)景気の現状は、企業収益が改善する中で、設備投資の増加が続くなど、緩やかに回復している、(2)引き続き良好な金融環境が維持されている、(3)先行き、海外経済等の外部環境に大きな変化がなければ、今後も設備投資を中心に緩やかな回復が続く可能性が高い、(4)需要の弱さに由来する潜在的な物価低下圧力は大きく後退している、といったものであった。

     以上の認識を踏まえ、わが国経済は「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢」に至りつつあるとの認識が概ね共有された。

    (略)

     ただ、多くの委員から、○○○政策△△△のタイミングについては、いわゆる「×××問題」が市場心理などに与える影響について、もう少し見極めてから判断しても良いのではないかという意見が出された。また、このうち何人かの委員からは、この問題の市場心理への影響とあわせて、企業マインドや消費者センチメントへの悪影響の可能性も指摘された。ある委員は、個別企業の問題が重要ということではないが、この問題が象徴している「特定セクター」の構造問題が世間で強く意識されている現状では、本日○○○を△△△した場合に、企業家心理にマイナスのインパクトを与えてしまう惧れもないわけではないと述べ、今日のところは、△△△を見合わせるのが適当である、との意見を示した。別の委員も、取り巻く経済諸情勢、とりわけ、いわゆる「×××問題」の経済界、金融界に対する心理的な影響を考えると、判断のタイミングとしては決めがたい、と述べた。

    伏字に何が入るかは、

    ○○○
    金融
    △△△
    引締め
    ×××
    サブプライム

    と入れたくなるところですが、実際には、

    ○○○
    ゼロ金利
    △△△
    解除
    ×××
    そごう

    なのです(笑)。そう、元ネタは2000年7月の金融政策決定会合議事要旨だったのでした。

    #蛇足ながら申し上げれば、ゼロ金利解除は翌8月でございました。

    08/20/2007 (4:39 am)

    竹中先生はpainを甘受してgainできるのでしょうか?

    Filed under: economy, BOJ ::

     急激に円高が進んだことについては「日本経済は昨年以降、デフレのもとで日銀が金利を引き上げており、これがじわじわと効いている。内需が強くなくて、外需に依存しているような形になってきており、円高はそれに対して決定的な影響を与えていく」との見方を示した。

     日銀は今月22、23日の金融政策決定会合で利上げの是非について議論する。竹中氏は「いくらなんでも、この状況下で金利を引き上げることはしないとは思うが、日銀はデフレの中で金利を引き上げるというマーケットの常識からは信じ難いようなことをこの1年間やってきた。その総決算をしてもらいたい」と利上げを強くけん制。その上で「日銀がちゃんとやってくれないと、(デフレ脱却が後ズレし)国民の消費税負担が増える。今そのワナに陥り始めており、マーケットとしっかりとした対話をしてもらわないと困る」と注文をつけた。

    朝日(ロイター)「サブプライム問題、銀行巻き込まれておらず底は抜けない=前総務相」

    デフレ下での利上げに異論があるとの結論において、webmasterは竹中先生と同じ立場にありますが、その前提となると大いに異なります。より正確には、竹中先生の前提がどのようなものなのか、政策プロモータとして突っ込んで考えていないという見方をとらないなら、何がなんだかよくわからないとしかいいようがないのです。

    かつてwebmasterは、日銀が自らの金融引締めを正当化するロジックとして、次のようなものを用いているであろうと推測しました

    • 潜在成長率を上回る経済成長
    • 国際的なディスインフレーション傾向
    • 絶対水準としての低金利=緩和的状態

    3番目は捨象するとして、水の沸騰の比喩を用いるなら、日銀の筋書きは、

    1. 火力は十分にあり100度に達している(現在の経済成長は潜在成長率を上回り、インフレギャップが生じている)。
    2. しかしながら、重い蓋が載っているので、まだ沸騰は見られない(国際的なディスインフレーション傾向のため、1.の状況にかかわらず、物価は上昇していない)。
    3. このような状況下において、2.のみを見て火力をもっと強くする(金融緩和の維持)のは蓋を吹き飛ばすような急激な沸騰の危険を招くものであり(著しいインフレのリスクがある)、100度を維持できる程度の火力を保つのが賢いやり方だ。

    というものとなります。webmasterの管見では、そもそも現在程度の火力ではまだ100度に達していないから沸騰していない(経済成長では潜在成長率を安定的に上回るものではないからデフレ圧力が消えない)のであって、もっと火力を強めよということとなるわけですが、竹中先生は小泉構造改革のイデオローグとして潜在成長率の低下を説いてしまっているので、100度に達していないとは認められていないわけです。

    そんな腰の引けた態度(笑)で日銀にとやかく注文をつけたところで、「100度に達しているのに火力を強めよなんて、バカなこと言わないでくださいよ」とあしらわれて終わりに決まっています。それどころか、政府の失政=構造改革の進捗がみられないので潜在成長率が上がらないことを覆い隠すため、日銀に濡れ衣を着せようとしているんでしょ、と足元を見られるのがオチでしょう。

    真に日銀の金融引締めを批判したいならば、まずは自らの過ちを認め、日本の潜在成長率はそんなに低くはないのだ、と言うべきではありませんか、竹中先生?

    08/08/2007 (11:57 pm)

    マネーサプライ前年同月比の推移(2007-07現在)

    Filed under: economy, BOJ ::
     年月    M2+CD   前年同月比
    2005.01  6,998,252  1.97%
    2005.02  6,953,440  1.85%
    2005.03  6,999,008  2.07%
    2005.04  7,049,983  1.83%
    2005.05  7,037,424  1.46%
    2005.06  7,038,765  1.62%
    2005.07  7,085,130  1.66%
    2005.08  7,077,972  1.64%
    2005.09  7,076,717  2.00%
    2005.10  7,055,711  1.91%
    2005.11  7,071,911  2.10%
    2005.12  7,125,369  1.90%
    2006.01  7,123,681  1.79%
    2006.02  7,075,631  1.76%
    2006.03  7,103,323  1.49% #量的緩和解除
    2006.04  7,171,703  1.73%
    2006.05  7,130,540  1.32%
    2006.06  7,123,454  1.20%
    2006.07  7,123,733  0.54% #ゼロ金利解除
    2006.08  7,109,742  0.45%
    2006.09  7,119,253  0.60%
    2006.10  7,100,080  0.63%
    2006.11  7,119,883  0.68%
    2006.12  7,178,944  0.75%
    2007.01  7,192,128  0.96%
    2007.02  7,150,627  1.06% #利上げ(0.25%→0.5%)
    2007.03  7,178,824  1.06%
    2007.04  7,250,297  1.11%
    2007.05  7,233,933  1.46% (revised)
    2007.06  7,255,130  1.86% (revised)
    2007.07  7,268,218  2.04%

    08/07/2007 (11:25 pm)

    日銀vs経済財政諮問会議

    Filed under: economy, CEFP, BOJ ::

    昨日の大田経済財政担当大臣の記者会見より。

     それから、日銀の福井総裁から、展望レポートの中間評価について御報告がありました。

     議論の中で、民間議員から日銀総裁に幾つか質問がありました。

     まずCPIが、この物価上昇率の改善がおくれているといいますか、下振れしているわけですね。昨年10月時点それから今回の時点、少し下振れしておりまして、これがなぜ下振れしているのかという質問がありました。これに対して福井総裁から、フィリップス・カーブがフラット化していると。念のため申し上げますと、フィリップス・カーブは横軸に失業率をとって、縦軸に物価上昇率をとると、この右下がりの関係にあるというものですが、つまり失業率が高い時点で物価上昇率が低くなっているという相関の姿ですけれども、これがフラット化していると、グローバル化ですとか国境を超えた企業間競争で、企業は生産性を上げる努力とあわせて固定費を削減する努力をしていると。日本はすでに失業率が3%台になって需給はタイトになっているけれども、労働者側も賃金よりも、やはり雇用安定への要望があると。それから、このフィリップス・カーブのフラット化は国際的にも共通の現象だと。ただ、需給は少しずつタイトになっているので、物価もタイトになっていくと見ていると。これが物価上昇率に反映してくるというふうに見ていると。

     それから、別の民間議員からの質問として、この2006年はCPIだけではなくて実質成長率も見通しといいますか、日銀の展望レポートでの見方を下方修正しているわけですけれども、これは実は需給がタイトになっていないのではないかという質問が出されました。これに対して福井総裁からは、2005年に GDPの確報で内閣府の計算として下方改定したことによって、ゲタと読んでいる発射台が下がったわけですね。それに基づく2006年の下方の修正であるという回答がありました。

     あとほかの、これは民間議員ではありませんが、これは名目が下がるということが問題であって、日銀は量的緩和を解除したときに、CPIはマイナスにならないという前提だったのではないかと、見通しを誤ったのではないかと。1日も早くデフレから完全に脱却しなくてはいけないという御発言がありました。

     福井総裁からは、日銀が用いている物価上昇率は、いわゆるコアと呼ばれる生鮮食料品を除く一方で、エネルギー価格は含むものなわけですね。したがって、原油価格の要因によって触れると。ただ、需給がタイト化している割に、サービスを含めて上昇圧力が弱いのは事実であると。これは4月の展望レポートには既に織り込んでいるという御発言がありました。

     それから、さらに民間議員から、このフィリップス・カーブがフラット化しているということは、急に物価が上がっていくということではなくて、労働需給がタイト化していっても、ゆっくりと物価が上がっていくという時間的余裕があるということではないかという指摘があって、福井総裁からは、十分に時間的余裕をもって金利水準の調整をゆっくり行うということをしていると。ただし、それ以上にさらにゆっくりやるということになると、資源配分のゆがみをもたらすことにもなりかねないという御発言がありました。

     マクロについては以上です。

    平成19年会議結果 第19回会議 記者会見要旨:内閣府 経済財政諮問会議

    民間議員らの日銀(そのロジックは、以前のwebmasterの分析に沿っているものです)へのツッコミはなかなかいいところを突いていると思うのですが、論破とまではいかないのは、もちろん福井総裁の受け答えのうまさ(あるいは鉄面皮っぷり(笑))はあるのですが、経済財政諮問会議自身、日銀を論破しては困ったことになってしまうからでしょう。何が困るかといえば、構造改革の神話が崩壊してしまうことです。

    結局のところ、上記の引用でいえば「需給は少しずつタイトになっている」という点がもっとも疑わしい(webmasterの分析でいえば潜在成長率<実質成長率(インフレギャップの存在))のですが、実はタイトにはなっていないのだとしてしまうと、潜在成長率が下がったことが日本経済の長期低迷の原因であり、それを構造改革で引き上げることが必要なのだ、ということの論拠もまた突き崩してしまうことになってしまいます‐現状の実質成長率ないしそれを若干上回る程度が潜在成長率だというならば、向上に向けた取組みの必要性は残るにせよ、他国に例を見ない経済低迷を潜在成長率の低下ゆえであるとすることができなくなるのですから。

    今なお潜在成長率の引上げが必要だとする安倍政権の経済政策をオーソライズしてきた諮問会議としては、あくまで潜在成長率は他国に比して低いものでなければならないわけです。福井総裁からすれば、そうした弱みを持つ諮問会議は、今の日銀の金融政策を説明する場として、これ以上なく気楽であるといえるでしょう。部分的には厳しくツッコまれるにせよ、大前提を同じくすることは保障されているのですから・・・。

    07/27/2007 (6:50 pm)

    8月利上げ観測を踏まえての意見表明‐CPIと「柱」と

    Filed under: economy, BOJ ::

    8月に日銀が利上げに踏み切るとの観測が広まっている中、その政策決定会合に先立つ最後のCPI統計が公表されました。日銀が指標としているコアCPI(生鮮食品を除く)、およびwebmasterがコアCPIよりも着目すべきと考えるコアコアCPI(酒類以外の食料およびエネルギを除く)の推移(対前年同月)を掲げれば次のとおりです。

    年月 コアCPI 同左(連鎖方式) コアコアCPI 同左(連鎖方式)
    2006.07 0.2 ▲0.3
    .08 0.3 ▲0.4
    .09 0.2 ▲0.5
    .10 0.1 ▲0.4
    .11 0.2 ▲0.2
    .12 0.1 ▲0.3
    2007.01 0.0 ▲0.1 ▲0.2 ▲0.3
    .02 ▲0.1 ▲0.1 ▲0.3 ▲0.3
    .03 ▲0.3 ▲0.3 ▲0.4 ▲0.5
    .04 ▲0.1 ▲0.2 ▲0.2 ▲0.3
    .05 ▲0.1 ▲0.2 ▲0.3 ▲0.4
    .06 ▲0.1 ▲0.2 ▲0.4 ▲0.5

    常識的に考えれば、すなわち金融政策は安定的な物価動向(=マイルドインフレ)の実現を目的として用いるとの理解に基づけば、このような状況で利上げすべき事情はまったくありません。むしろ、CPIの上方バイアスを捨象するとしても、継続してコアコアCPIが下落基調であるわけですから、利下げ(さらには量的緩和への復帰)すべきというのがwebmasterの考えです。

    しかし、日銀はこの見解ではありません。日銀の採用する金融政策運営の基本となる考え方は、第一の柱・第二の柱と表現されていますが、それをwebmaster流に翻訳すれば次のようなものとなります。

    第一の柱

    2年間の将来予測に基づく金融政策判断

    第二の柱

    2年後以降のリスクに対応するための金融政策判断

    日銀自身の自覚がどうであるかはwebmasterはよく知るものではありませんが(笑)、第三者として観察するに、量的緩和解除〜ゼロ金利解除あたりまでは第二の柱=バブル再発防止を相当意識した説明ぶりであったところ、その後の株価の推移等により自信を喪失したのか(笑)、最近では第一の柱を中心とした説明となっています。デフレ脱却を口にして量的緩和を解除したのにもかかわらず、コアコアCPIで見ればずっとデフレですし、コアCPIで見てもデフレ回帰が観察される(しかも、くどいようですが上方バイアスを考慮せずとも、です)中、なぜ第一の柱で利上げが可能なのか、おそらくは次の前提を置いているからでしょう。

    • 潜在成長率を上回る経済成長
    • 国際的なディスインフレーション傾向
    • 絶対水準としての低金利=緩和的状態

    これらの前提から、次のようなストーリーを日銀が描いているものと考えられます。

    1. 経済成長においては、好況であれ不況であれ過度の変動は望ましくなく、行き過ぎた好況が見込まれるのであれば、引締めを図るべき。
    2. 近年は潜在成長率を上回る経済成長=経済は過熱気味であり、その継続が見込まれるので、1.に照らせば、徐々に引締めへの方向転換を図るべき。
    3. 他方、物価は「経済は過熱気味」との認識とは逆向きの動きであるが、国際的なそれはディスインフレーション傾向ゆえのことであって、その傾向を差し引けば上昇しているも同然である。
    4. そうはいってもそれほどの上昇幅ではないだろうから、物価への配慮として金利の絶対水準は低く抑えている=金融は緩和気味を維持しており、引き締めているわけではない。

    webmasterはこのストーリーを採らないわけですが、つまりは前提がおかしいと考えるからです。具体的には次のとおりとなります。

    • 潜在成長率は過小推計ではないか。コアコアCPIが対前年同月マイナスを続け、失業率もNAIRUに達していないのは、依然として潜在成長率以下か、上回るとしても若干程度に止まっていることを示唆するのではないか。
    • 国際的なディスインフレーション傾向なるものが仮に存在するとしても、それはあくまでマイルドインフレの達成がなされているということであり、(インフレ率に基づき定義する)デフレから脱却できないことの理由にはならない。
    • 名目金利の絶対水準で引締めか緩和かを定義するのはナンセンス。たとえば現状であれば5%の金利はすさまじい引締めとなりますが、インフレ率が10%であればすさまじい緩和なわけですから。

    付け加えるならば、このような理屈を別にしても、上記ストーリーに基づく金融政策は、運営のあり方としても疑問です。というのも、CPI統計が国際的なディスインフレーション傾向なるものによって政策の指標足り得ないとしてしまっており、となれば政策の指標としては経済成長を見てということと思わざるを得ません。しかし、経済成長率(GDP統計)は算出にCPIよりもはるかに時間を要し、たとえば現時点で利用可能な最新データは本年の第1四半期の2次速報に過ぎません。すでに第3四半期に入っているというのに、2期も前、しかも確定でない計数ということになります。

    当然ながらそれを理由に足下の金融政策を説明することはできません。となれば、この手の統計数値には基づかず裁量的に経済成長の程度を総合判断して金融政策を決定している、ということにならざるを得ませんが、これでは金融政策判断の是非を議論しようにも水掛け論になってしまいます(現実がそうであるように)。第一の柱に基づき、しかもCPIを事実上無視して金融政策を決定するというのであれば、短観でもなんでもいいのですが、基本となる判断指標は何かを明らかにし、裁量で他の要素を考慮したというのならば何をどのように考慮したのかを明確にするのが、中央銀行に求められる真の透明性というものでしょう。逆に言えば、その手の透明性をあやふやにしているからこその利上げであるということにもなるのですが・・・。

    07/09/2007 (11:58 pm)

    マネーサプライ前年同月比の推移(2007-06現在)

    Filed under: economy, BOJ ::
     年月    M2+CD   前年同月比
    2005.01  6,998,252  1.97%
    2005.02  6,953,440  1.85%
    2005.03  6,999,008  2.07%
    2005.04  7,049,983  1.83%
    2005.05  7,037,424  1.46%
    2005.06  7,038,765  1.62%
    2005.07  7,085,130  1.66%
    2005.08  7,077,972  1.64%
    2005.09  7,076,717  2.00%
    2005.10  7,055,711  1.91%
    2005.11  7,071,911  2.10%
    2005.12  7,125,369  1.90%
    2006.01  7,123,681  1.79%
    2006.02  7,075,631  1.76%
    2006.03  7,103,323  1.49% #量的緩和解除
    2006.04  7,171,703  1.73%
    2006.05  7,130,540  1.32%
    2006.06  7,123,454  1.20%
    2006.07  7,123,733  0.54% #ゼロ金利解除
    2006.08  7,109,742  0.45%
    2006.09  7,119,253  0.60%
    2006.10  7,100,080  0.63%
    2006.11  7,119,883  0.68%
    2006.12  7,178,944  0.75%
    2007.01  7,192,128  0.96%
    2007.02  7,150,627  1.06% #利上げ(0.25%→0.5%)
    2007.03  7,178,824  1.06%
    2007.04  7,250,297  1.11%
    2007.05  7,233,932  1.46% (revised)
    2007.06  7,252,161  1.82%

    06/23/2007 (11:43 pm)

    マネーストック統計

    Filed under: economics, BOJ ::

    にマネーサプライ統計の名称が変わるらしいです。

     日本銀行では、現在、本年10月から実施される郵政民営化や、金融商品の多様化等の環境変化に対応するため、「マネーサプライ統計」の見直し作業を進めております。今般、その方向性が固まってきたことから、その内容を公表して、広く皆様のご意見をお伺いすることにしました。

     今回の見直しの主な変更点は次のとおりです。

    1. M2+CD対象預金と郵便貯金・系統金融機関預貯金を統合し、全預金取扱機関の預貯金を包含する新「M3」を作成します。なお、現行「M2+CD」と接続する指標については、新「M2」として当面は公表を継続します。

    2. 通貨保有主体の範囲を見直し、「証券会社」、「短資会社」、「非居住者」を通貨保有主体から除外します。

    3. 広義流動性に「私募投信」、「金融機関発行普通社債」を追加する一方、「債券現先取引、現金担保付債券貸借取引」を除外します。

    4. 統計の名称を「マネーサプライ統計」から「マネーストック統計」に変更します。

    マネーサプライ統計の見直し方針── ご意見のお願い ──(html版(冒頭のみ掲載))

    1は尤もな変更だと思いますし(郵便貯金はともかく、系統金融機関預貯金をM2から外していたことには、経緯以上の意味があるとは思えません)、2や3も説明を読む限りなるほど、というものです。しかし、名称をマネーストックに変更するのは、

    通貨統計の名称については、1967 年に「マネーサプライおよび関連指標」の作成が開始されて以来、「マネーサプライ統計」という名称が用いられてきました。

    しかし、海外では、当初はmoney supplyという名称を用いていましたが、その後徐々にmoney stockやmonetary aggregatesといった用語が使用されるようになりました。具体的には、米国では1970年12月、英国では1971年にそれぞれmoney supplyからmoney stockに変更されたほか、欧州中央銀行では、1998年の設立時からmonetary aggregatesという名称を使用しています。

    こうした国際的な動向を踏まえ、今回の見直しを機に、現在の「マネーサプライ統計」の名称を「マネーストック統計」に変更する予定です。

    マネーサプライ統計の見直し方針── ご意見のお願い ──(pdf版)

    と言われても、昔ながらのものでいいんじゃないの、という気がしないでもありません(どうしてもというならば、海外向け、具体的には英語版の資料の名前だけ変えればいいわけで)。実際、The Concise Encyclopedia of EconomicsのMoney Supplyの項(Anna J. Schwartzによるもの)を見る限り、英語圏でも経済学の世界ではmoney supplyの方が標準的な言い方であるように思われますし。

    ちなみに、変更が「マネーストック統計」へであって「マネタリーアグリゲイト統計」へではないことは、変更を所与とするなら、webmasterは評価したいと思います。というのも、現在のマネーサプライ統計のURIはhttp://www.boj.or.jp/theme/research/stat/money/ms/index.htmなのですが、monetary aggregatesだとこれがhttp://www.boj.or.jp/theme/research/stat/money/ma/index.htmに変更され、このページへの従来のリンクがデットリンクになってしまうと予想されるからです。ま、「マネーストック統計」にした理由は、そちらの方が日本人にとって親しみのある英単語だとか、長さが短いとか、そういった理由であって、URIを変更せずに済むなんてことは考慮の外でしょうけれども(笑)。

    06/21/2007 (8:58 pm)

    デフレ下の利上げはおかしいことの傍証

    Filed under: economy, BOJ ::

    この手の地道な検証をwebmasterはサボっているので、備忘として。以後この手の議論をするときには引こうかとの下心で(笑)。

    06/09/2007 (11:58 pm)

    マネーサプライ前年同月比の推移(2007-05現在)

    Filed under: economy, BOJ ::
     年月    M2+CD   前年同月比
    2005.01  6,998,252  1.97%
    2005.02  6,953,440  1.85%
    2005.03  6,999,008  2.07%
    2005.04  7,049,983  1.83%
    2005.05  7,037,424  1.46%
    2005.06  7,038,765  1.62%
    2005.07  7,085,130  1.66%
    2005.08  7,077,972  1.64%
    2005.09  7,076,717  2.00%
    2005.10  7,055,711  1.91%
    2005.11  7,071,911  2.10%
    2005.12  7,125,369  1.90%
    2006.01  7,123,681  1.79%
    2006.02  7,075,631  1.76%
    2006.03  7,103,323  1.49% #量的緩和解除
    2006.04  7,171,703  1.73%
    2006.05  7,130,540  1.32%
    2006.06  7,123,454  1.20%
    2006.07  7,123,733  0.54% #ゼロ金利解除
    2006.08  7,109,742  0.45%
    2006.09  7,119,253  0.60%
    2006.10  7,100,080  0.63%
    2006.11  7,119,883  0.68%
    2006.12  7,178,944  0.75%
    2007.01  7,192,128  0.96%
    2007.02  7,150,627  1.06% #利上げ(0.25%→0.5%)
    2007.03  7,178,824  1.06% (revised)
    2007.04  7,250,297  1.11% (revised)
    2007.05  7,231,796  1.42%
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