日銀vs経済財政諮問会議
昨日の大田経済財政担当大臣の記者会見より。
それから、日銀の福井総裁から、展望レポートの中間評価について御報告がありました。
議論の中で、民間議員から日銀総裁に幾つか質問がありました。
まずCPIが、この物価上昇率の改善がおくれているといいますか、下振れしているわけですね。昨年10月時点それから今回の時点、少し下振れしておりまして、これがなぜ下振れしているのかという質問がありました。これに対して福井総裁から、フィリップス・カーブがフラット化していると。念のため申し上げますと、フィリップス・カーブは横軸に失業率をとって、縦軸に物価上昇率をとると、この右下がりの関係にあるというものですが、つまり失業率が高い時点で物価上昇率が低くなっているという相関の姿ですけれども、これがフラット化していると、グローバル化ですとか国境を超えた企業間競争で、企業は生産性を上げる努力とあわせて固定費を削減する努力をしていると。日本はすでに失業率が3%台になって需給はタイトになっているけれども、労働者側も賃金よりも、やはり雇用安定への要望があると。それから、このフィリップス・カーブのフラット化は国際的にも共通の現象だと。ただ、需給は少しずつタイトになっているので、物価もタイトになっていくと見ていると。これが物価上昇率に反映してくるというふうに見ていると。
それから、別の民間議員からの質問として、この2006年はCPIだけではなくて実質成長率も見通しといいますか、日銀の展望レポートでの見方を下方修正しているわけですけれども、これは実は需給がタイトになっていないのではないかという質問が出されました。これに対して福井総裁からは、2005年に GDPの確報で内閣府の計算として下方改定したことによって、ゲタと読んでいる発射台が下がったわけですね。それに基づく2006年の下方の修正であるという回答がありました。
あとほかの、これは民間議員ではありませんが、これは名目が下がるということが問題であって、日銀は量的緩和を解除したときに、CPIはマイナスにならないという前提だったのではないかと、見通しを誤ったのではないかと。1日も早くデフレから完全に脱却しなくてはいけないという御発言がありました。
福井総裁からは、日銀が用いている物価上昇率は、いわゆるコアと呼ばれる生鮮食料品を除く一方で、エネルギー価格は含むものなわけですね。したがって、原油価格の要因によって触れると。ただ、需給がタイト化している割に、サービスを含めて上昇圧力が弱いのは事実であると。これは4月の展望レポートには既に織り込んでいるという御発言がありました。
それから、さらに民間議員から、このフィリップス・カーブがフラット化しているということは、急に物価が上がっていくということではなくて、労働需給がタイト化していっても、ゆっくりと物価が上がっていくという時間的余裕があるということではないかという指摘があって、福井総裁からは、十分に時間的余裕をもって金利水準の調整をゆっくり行うということをしていると。ただし、それ以上にさらにゆっくりやるということになると、資源配分のゆがみをもたらすことにもなりかねないという御発言がありました。
マクロについては以上です。
平成19年会議結果 第19回会議 記者会見要旨:内閣府 経済財政諮問会議
民間議員らの日銀(そのロジックは、以前のwebmasterの分析に沿っているものです)へのツッコミはなかなかいいところを突いていると思うのですが、論破とまではいかないのは、もちろん福井総裁の受け答えのうまさ(あるいは鉄面皮っぷり(笑))はあるのですが、経済財政諮問会議自身、日銀を論破しては困ったことになってしまうからでしょう。何が困るかといえば、構造改革の神話が崩壊してしまうことです。
結局のところ、上記の引用でいえば「需給は少しずつタイトになっている」という点がもっとも疑わしい(webmasterの分析でいえば潜在成長率<実質成長率(インフレギャップの存在))のですが、実はタイトにはなっていないのだとしてしまうと、潜在成長率が下がったことが日本経済の長期低迷の原因であり、それを構造改革で引き上げることが必要なのだ、ということの論拠もまた突き崩してしまうことになってしまいます‐現状の実質成長率ないしそれを若干上回る程度が潜在成長率だというならば、向上に向けた取組みの必要性は残るにせよ、他国に例を見ない経済低迷を潜在成長率の低下ゆえであるとすることができなくなるのですから。
今なお潜在成長率の引上げが必要だとする安倍政権の経済政策をオーソライズしてきた諮問会議としては、あくまで潜在成長率は他国に比して低いものでなければならないわけです。福井総裁からすれば、そうした弱みを持つ諮問会議は、今の日銀の金融政策を説明する場として、これ以上なく気楽であるといえるでしょう。部分的には厳しくツッコまれるにせよ、大前提を同じくすることは保障されているのですから・・・。
