厚生労働省事務次官・社会保険庁長官人事
先日の防衛省に続いての次官・次官級人事として世の耳目を集めております。
政府は24日、年金記録のずさんな管理問題の責任が問われていた社会保険庁の村瀬清司長官(60)を退任させ、後任に総務省出身の坂野泰治・日本放送協会監事(60)を充てる人事を決めた。厚生労働省の辻哲夫事務次官(60)も退任し、後任には旧厚生省出身で、前内閣府事務次官の江利川毅・日興フィナンシャル・インテリジェンス理事長(60)を起用する。年金記録問題に伴う事実上の更迭といえる。同日開いた首相官邸の人事検討会議で了承した。31日付。
安倍首相は24日夜、訪問先のクアラルンプールで記者団に「一刻も早く、新しい体制で国民の不信を払拭(ふっ・しょく)して前進していかなければならないという観点から、けじめとして現在の内閣において人事を行った」とした。
朝日「社保庁長官を更迭 後任に坂野氏 厚労次官も 年金問題」
辻次官は昨年9月に就任したのですから、1年という通常の次官の任期満了に「けじめ」の時期が重なったに過ぎないともいえます。しかし、村瀬長官の人事については、とりわけ彼が民間から登用されたことを考えると、残念なことだと思わざるを得ません。ちょうど先日のエントリのコメントとして本件について尋ねられた際、webmasterは次のように書きました。
それよりも、郵政公社の生田前総裁もそうでしたが、民間から招聘された者が最終的には石もて追われる状況なのは、誰も引き受けてがなくなるのではないかという気がします。先日、日本政策金融公庫に統合される諸機関等のトップは民間から登用するとの記事がありましたが、とりわけ国民生活金融公庫以外の総裁のなり手は、少なくとも積極的にやりたいなんて人はいないんじゃないでしょうか(国民生活金融公庫総裁が新公庫のトップになるとの報道であり、となればそれ以外の総裁になっても1年後にはナンバーツー以下ですから)。
実際、以前に村瀬長官が謝罪ビラを街頭配布させられた際には、次のような報道がありましたし、
「官邸はずいぶん焦っているな」(与党議員)。厚生労働省と社保庁に対し、官邸から矢継ぎ早に細かい指示が飛ぶようになったのは先月最終週以降。各種の世論調査で内閣支持率の急落傾向が鮮明になったためだ。
他の官庁は「対策がその日暮らしでドタバタ感がある」と冷ややかな視線を送り、社保庁幹部は「支持率低迷の責任はわが身にあり」と身を縮める。
一方、首相周辺では語呂合わせ問題の世耕氏に代わり、塩崎氏が前面に出て“官邸主導”の大号令を連発したが、空回り続きだ。
七日午後、東京と大阪の繁華街一カ所ずつに設けた緊急相談窓口は、事前告知がなく訪れた相談者はごくわずか。八日朝には、村瀬清司社保庁長官自らが記録相談を呼び掛けるビラ配りでJR東京駅頭に立ったが、ワイドショーなどで「本来業務をちゃんとやるべきだ」と酷評された。
厚労省幹部は、損保ジャパンの副社長から初の民間出身長官として「三顧の礼」で迎えた村瀬氏を「さらし者にしてしまった」と悔やむ。塩崎氏からは、柳沢伯夫厚生労働相もビラを配るよう要求され、押し戻すのが精いっぱいだった。
大手生保幹部は、社保庁の惨状について「今後は民間から誰もトップを引き受けないんじゃないですか」とあきれた。
東奥日報「断面2007/年金記録不備の政府対応/官邸「暴走」で大混乱」
今回の人事に関する報道においても、次のような報道がありました。
厚労相は当初、村瀬氏の後任には再び民間人を登用する方向で検討し、経済界に打診していた。しかし、適任者が見つからず、年金記録の確認などを担当する菅総務相や塩崎官房長官らと協議して、総務省OBを起用することで決着した。社保庁は2010年に非公務員型の日本年金機構へ移行することが決まっている。
読売「社保庁長官・厚労次官を更迭…後任長官に総務省OB坂野氏」
社保庁長官の後任選びで柳沢氏は民間からの起用も模索した。だが、年金問題の逆風下で適任者が見つからず、日本放送協会監事として現業部門も経験した坂野氏を最終的に選んだ。
朝日「社保庁長官を更迭 後任に坂野氏 厚労次官も 年金問題」
読売・朝日とも「適任者が見つからず」としていますが、誰も火中の栗を拾わなかったというのが真相でしょう。大組織を運営した実績のある者を招聘しようとすれば、それなりの大企業の経営陣経験者となりますが、そのまま引退するなり子会社等に「天下り」するなりしていれば約束される老後の安泰を擲ったところで、不祥事があればがいどうで街頭でビラ配りまでさせられた上でスケイプゴートとして詰め腹を切らされるというのでは、来てもらえるはずもありません。
他方で、官僚という人種は、そうした場合に(それこそ事実上の命令で)人の嫌がるポストにも就くことを受け容れるよう、社会人経験を通じて規律付けられる人種であるともいえます。今般、民間人からはそっぽを向かれた社会保険庁長官に坂野監事が就任するのもその一例といえるでしょうし、さらにわかりやすい例としては、経営破綻の前に天下り、最後のトップとして有罪判決を受ける可能性が極めて高い窪田日本債権信用銀行元頭取が挙げられるでしょう。
#脱線ですが、接待不祥事等で霞が関が批判に晒されていた際には、検察出身者がかなりの頻度で登用されましたが、今般は旧総務庁OBとのことで、本当に行革が課題だからそうなったのか、検察からも嫌がられるようになったのか(笑)、どちらなのかなぁ・・・。
上で引用したwebmaster自身のコメントに再度触れるなら、来る政府系金融機関のトップ人事には興味が惹かれます。民間人登用を公言したところで、どうせ内諾をもらっているような手際のよさはないでしょうから(笑)、調整に入ったら誰も引受け手がいない、なんてことにもなりかねません。民間から人に来て欲しいなら、まずは今民間から来てもらっている人に「来てよかった」と思いながら退任してもらえるような環境を整えなければならないとwebmasterは思うのですが、これって霞が関の常識・世間の非常識なんですかねぇ?
#どんなにひどい目にあわせても引き受けるはずだと官邸がお考えなら、それこそ官僚相手のやり方が普遍的に通用するとの誤解を抱いているのでは(笑)。
